内容説明
彼女のサイレント・ポートレート
会話や口にされる言葉がまったくないまま小説はしばらく進行していく。
彼女、と呼ばれる女性がどんなふうに水にダイヴするのか、どんな水着でどう歩くのか、本を読む時はどうか、オートバイに乗ったらどうなるか、どのようにコーヒーを飲むか、そうしたポルトレの数々で、ストーリーがあるようなないような曖昧さの中で進んでいく。
「彼女」は1人なのか、複数なのか。
そして48章にいたって、転回が始まる。これはどんな小説か。
「彼女から学ぶ」のは誰なのか?
【著者】
片岡義男
1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kishikan
8
良い、いい、so good!最後の3篇若干小説風だけど、それを除き、断片的でつながりのない、カード風のフォトエッセイなんだけれど、彼女の行動や生活をコントラストの効いた、でもあくまでもクールにそして外から見つめているように描いた文章は、片岡義男らしさにあふれている。本当は、70年代の片岡義男に魅せられていたけど、この85年物もなかなかだね。ただ、「彼女から学んだこと」は一体何だったんだろう、て思うのは僕だけかしら。2012/04/20
りんご
4
登場する女性の名前は分かりません。ただ彼女とだけ記されています。 光と影,そんなシルエットだけの描写。読む写真集です。想像はお好みのままに。。。です2022/03/12
CEJZ_
1
1P17行。時々昔の片岡義男の文庫が読みたくなる。この本はページの上下に余白が広くあり、文章は中段にのみある。1から50まで番号がふってあり、内容はそれぞれ女性の佇まいと周辺を描写したメモのようなもの。前半、中盤、後半の3パートに、中道順詩と大西公平が写した静物や風景のポートレートがまとめてはさまれている。コンセプト物の作品だな。女性がいる場所にはプールや外国、室内、クルマ、バイクなどなど。1985年の作品だが、女性はスタイリッシュだな。今の時代にはない空気感を感じるし、ノスタルジックでもある。2017/01/27
TAC
0
85年読了
バーニング
0
著者自身が「彼女から学んだこと」をもとに書き下ろした50ものショートストーリー。外面を書きたいのでしょう、と彼女は言ったようだが、本当にそれと写真しかない。でもそれらがあれば、片岡義男は成り立つ。2014/10/30