内容説明
やがて無言になり、かろうじて一言つぶやく。
「波が来る」
オアフ島の北海岸にある小屋で
4人の若いサーファーが共同生活をしている。
50フィートという途方もない高さを持つ波を経験し、
それを16ミリ・フィルムで撮影することにも彼らは成功した。
スクリーンに映し出された波を追体験する時間と
一瞬に通り過ぎた現実の波の時間、待機の時間。
3種類の時間はしかし、すべてが1つになって彼らの人生の時間になる。
目の前にある圧倒的な無限を知ってしまった人間の
充実した空虚がここにある。
心理を描かない作家・片岡義男の絶対処女作。
【著者】
片岡義男:1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。