内容説明
イージー・チェアから見えた世界
ハワイ。作者・片岡義男の祖父が、父が住んだその場所のことを書いた渾身の長編。優れた農業技術者だった祖父。その息子である「僕」の父は、アメリカ軍の軍人だった。そして姉が異母姉であることが姉弟関係に微妙な影を落とす。アメリカと日本のあいだにあるハワイという場所にあった歴史。家族写真。アロハ・シャツ。コナのコーヒー。古いビートル。ヴェトナム戦争。エルヴィス・プレスリー。「僕」は今、父が作った庭を、父がイージー・チェアに座って絶命する瞬間も見ていたであろう庭を、同じ位置から見ている。
【著者】
片岡義男
1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
目次
ラハイナまで来た理由
片仮名ではスパム・アンド・エッグス
パウ・ハナの美女
雛祭りに泣いた
雨の夜の映画
濡れた新聞とコナ・コーヒー
赤い帽子のバトロメ
いつもその窓から見ていた
失われた路面電車
写真に添えたひと言
買って来たピッツアとロウソクの明かり
干潮時水位
カプリース・クラシック・クーペ
ふたりで食べた林檎
父親のウクレレ
雨の朝のヒロ・マーチ
エルヴィスで四ページ
カリフォルニア生まれだ、ソバカスがある
ファミリー・フォトグラフズ
プールにも台風が来た
プレート・ランチという幸福
ファイヴ・オーのなかのハワイ
ウルパラクアの赤
まるで落穂拾いのように
ホノルルで雑誌を作る
そこを滑り下りる遊び
別れの磯千鳥
姉とエルヴィス・プレスリーの会話