内容説明
「東京は激変するよ。だから東京を撮っておくといい」
1950年代から60年くらいの東京を舞台にした長篇小説。作家と同じヨシオ、という名前を持つ若者が登場する。彼が高校生から大学生にかけて接触する女性たちは、すべて年上だ。変わってゆこうとしている東京の街で、ヨシオは女性たちに学び、まだ何者でもない自分の中に核のようなものを作ろうとしている。そしてこの小説は高度成長期の、前を向いたエネルギーばかりでなく過去を確かめ、過去の連続の中に現在があることも大切にしている。そのことを端的に現すのが、この小説における写真の役割であろう。
【著者】
片岡義男
1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
目次
名前は仮にスーザン
肩はいかにセクシーか
美しき太腿のほとり
謎を記録する、謎を記憶する
可能性という謎
電話を受けているうしろ姿
あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ほほほ
22
青空文庫に新しく追加されたのをきっかけに、電子と書籍、両方で読みました。書籍の表紙がすてき。片岡さんご自身が撮られたもので、50年代前半のアメリカの雑誌のグラビアを複写したものらしいです。舞台は1960年代の東京。主人公は20代前半の男子学生。内容はいつもながら、行動力のあるさばさばした人たちと美人が盛りだくさんで、写真を撮ったり文章を書いたり本を創ったり恋をしたり。似た内容が多いのに読んでしまう片岡作品。そろそろ飽きてきたかな?2015/08/18
rakim
10
若い官能の在り方は普遍であってほしいと思う。通り過ぎていくものでありながら、そこにある感情をちゃんと意識して大人に‘なっていく’ことが美しいのだから。 常にその時代の憧れる格好よさを小説に描いてきた作家さんのイメージがありますが、この『東京青年』はノスタルジーなのかオマージュなのか。片岡さんが書かれた時期を知り(著者50代)、背景に選ばれた1950年代の青年の人生(現在は彼らの人生も70代以上!)を思います。官能小説に近い部分もありながらすこし感慨もあり・・2013/06/30
アーノルド
4
あらすじに惹かれて手にした、著者初読作品 『少年の爽やかな青春小説』と謳っています “青春小説”と聞くと、イメージとして幾つかのストーリーが浮かびますが、スマートで洗練された少年が、非の打ち所のない淑女に出逢い親密になっていく本作の縁には、ただただ必然性を感じてしまう 官能的な場面も、厭らしさを感じるコトなく、文学的な艶かしさで書き記されています 何処までもオシャレな、作品でした すべては表紙の写真に集約されているように感じました! 2017/08/06
narakunona
2
1950年代の東京が舞台。登場人物が全てにおいて余裕がある人たちで羨ましいな。そして、そんな余裕ある人たちの生活は面白い!主人公は帰国子女のハーフの少年、親友はフィルムカメラでバシバシ美人の写真を撮るカメラ小僧。出てくる女性の描写が素敵で、作者は女の人大好きなんだろうなぁと思った。2017/11/25
sakwai
2
青空文庫で繰り返し読んで、どうしても書籍として手元に置いておきたいという欲望に勝てず購入。一体この小説のどこにこんなに魅了されるのだろうという分析もできないまま、相変わらず手に取り、どこからということもなく読みついでいる。この中毒性は何。オレだけなのか。2017/06/13