内容説明
ある小説の助走のような小説は、そのままひとつの完璧な小説になった
作家自身が「あとがき」に書いたようなひとつの明確なイメージ、明確だが小説としては何年も結実しなかったイメージの定着がここにはある。
この小説では登場人物の誰もが物語を作ろうとしている。
作ろうとしながら、自分自身にも物語を持っているのは女性たちだ。
1人の男性作家によって彼女たち自身のティーンエイジャーの頃の生きた時間が呼び出され、語られ、しかしその語りの一部にはフィクションも含まれている、という微妙なあり方。
誰もが現実を超えた手の届かない存在に向けて大人になった今の時間を生きる。
【著者】
片岡義男
1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
りんご
4
最初の少年が湖畔で年上の女性に出会い、珈琲を飲む話が素敵でした。2022/06/23
権蔵
1
何度も思いますが、片岡義男氏の描く女性は本当に魅力的だ。この物語のシチュエーションもとても良い‼︎妄想は膨らむばかり…2015/09/12
TAC
0
86年読了
ボールパーク
0
小説をよく読むようになったのが17,8の頃。その頃から20代前半くらいまで片岡義男の小説はたくさん読みましたが、これが1番好きでした。何十年ぶりかで、ふと思い立ち、本棚から引っ張りだして再読。殆ど忘れていたストーリーのディテールとともに、すっかり忘れていた20代の頃のヒリヒリするような痛みを伴うあれやこれやの世界に対する様々な気持ちが胸に蘇りました。日々の現実的暮らしの中で、特に役にたつわけでもないんで、顧みられることなく干からびかけてた場所に柔らかい水がすーっと染み込んでいく感じ。今年60歳になります。2024/03/15
優大さん#jL2Kdk
0
この淡々としたダンディなストーリーの書き方に惚れ惚れする。片岡義男の、ストーリーを作るときの頭の中を、ほんの少しだけ覗きみれたような気がして嬉しい。2023/08/18