内容説明
アイドルが一過性のブームではなく文化として根づきつつあるいま、アイドルという芸能ジャンルの特性を、「SNSや現場の重視」「アイドルのパーソナリティの開示」「ファンの承認欲求」という観点から分析して、アイドルを語る言葉をバージョンアップする。
目次
はじめに
第1章 アイドルという言葉
1 「国民的」か「一部の熱狂」か
2 誰でも語りうるものとしてのアイドル
3 何がアイドルと呼ばれるか
4 「アイドル」の不確かさ
第2章 アイドルらしさをめぐって
1 アイドルの語りやすさ
2 アイドルの主体
3 “操り人形”としてのアイドルの歴史
4 「アイドルになる」を選び取ること
5 「アイドルらしさ」とは何か
第3章 音楽としての「アイドルらしさ」
1 “低級”音楽としてのアイドル
2 アイドルのパーソナリティと音楽性
3 「アイドルらしからぬ」は更新されるか
第4章 アイドルの「虚」と「実」を問い直す
1 「饗宴」から考える
2 アイドルのパーソナリティがコンテンツになること
3 「表」と「裏」の狭間にあるもの
4 人格を承認しあうコミュニケーション
5 ネガティブさを捉え返す契機
第5章 「場」としてのアイドル
1 本書の要旨――アイドルとは何か
2 アイドルと恋愛
3 饗宴としてのアイドル
あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
またの名
8
誰でも名乗れる時代になったので「アイドルと言い張るグループ(笑)」や正統派アイドルらしさを学ぶ体裁で喜劇化するAKBの配信番組など、概念のお遊びが余りに高度化。その言葉にまつわる多様な言説を歴史的文脈ごとに整理し、ある時から発生した操り人形というイメージはそれを逆手に取ってアイドルらしくないアイドルや敢えて正統派の虚構を演じるゲームとして今や展開してる状況を分析。SNSや動画配信により舞台上用の表の姿と違う裏の顔をダダ漏れ披露するパフォーマンスではないことになってるパフォーマンスも氾濫し、訳が分からない。2024/02/13
たま
8
アイドルという言葉の意味から出発し、アイドル戦国時代といわれる今の「アイドルらしさ」とは何かについて、握手会や音楽性、SNSなどを通して論じた本。70年代から現在に至るまで、アイドルを取り巻く状況は大きく変わってきているにも関わらず、アイドルに操り人形性を求めるステレオタイプのアイドル観は消えない。だからこそ「アイドルらしからぬ」アイドルであることを売りにすることも可能である。あえてステレオタイプを演じるアイドルや、あえて邪道に走るアイドルがいて、多様性溢れる今のアイドルというジャンルが私は好きです。2014/06/14
静かな生活
2
【時代と結婚したジャンル/存在】 先日、とあるアイドルグループに一度没入してからというもの、そこから少なくとも1ヶ月ほどは、痺れに近いような感覚でひたすらインターネットでその対象の情報を貪った。あの異様なコンテンツ消費の感覚は何だったのだろうか、というシリアスな疑問に対抗するための一冊といったところだ。中々、用意周到な、クールな語り口/視点である。アイドルとは○○だ、という具合でなく、反芻を繰り返す。私/公の場が混在した、「何でもあり」なアイドルというフォーマットは、ネット時代と結婚した存在に違いない。2018/05/10
72ki
2
結局「アイドル」は、「わからない」んじゃなくて「なんでもない」のではないかとの思いは拭えない。ドメスティックな「アイドル」のことをズブズブと考えていても堂々巡り。海外や過去の芸能との比較検討がもっともっと必要な「ジャンル」なのではないでしょうか。著者のご専門の歌舞伎との比較などをもっと読んでみたいし、その上でいろいろ考えてみたいところです。で、きゃりーぱみゅぱみゅはアイドルなの???2014/09/05
nightU。U*)。o○O
2
3月に発行されており、書かれたのは恐らく年明けまでだろう。そのために、ここで扱われる「アイドル」はアイドル史上の過去の文献を辿りつつ基本的には現在活躍するアイドルグループに焦点を当てたものである。様々な面に表れるアイドルの特徴を詳細にあたっており、現代アイドルを見た最新で包括的なものとして決定的なものと言えるのではないか。恋愛やメンバーとファンの間の交歓のあたり、若干踏み込みが他の章に比べて物足らない気がするが、「アイドル」を定義しないことで扱う辺り、逆に正確性を持った議論を展開している。2014/06/20