内容説明
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日本人にとっての動物園とは何か? 「輸入」されて一世紀をへたいま、その存在意義の再考を促す論考集。イデオロギー装置としての動物園の機能を明らかにしながら、人と動物の関係を、見る/見せる/所有するという行為の次元でとらえなおす。
目次
第1部 「人間」は動物園でつくられる 第1章 メディアとしての動物園──動物園の象徴政治学 渡辺守雄 第2章 動物の深淵、人間の孤独 西村清和 第3章 愛玩と所有──動物を愛するということの逆説 浅見克彦 第4章 動物園における展示のあり方 正田陽一第2部 日本人と動物園 第5章 欧米の動物園の源流 池上俊一 第6章 日本の動物園の歴史 日橋一昭 第7章 日本人の動物観を探る 中村禎里 第8章 曖昧な日本の動物園 山本茂行第3部 21世紀の動物園は何を伝えるのか 第9章 地域社会のメディアとしての動物園へ 山本茂行 第10章 都市的情報装置としての動物園 柏木博
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あなた
7
何よりも私たちは権力的なまなざしの悦楽に誘われて動物園に向かうことを確認しなければならない。百年前にさかのぼれば動物園には「土人」やアイヌのひとが見世物として展示されていたことも忘れてはならない。動物園とはそれまで見えなかった動物の可視化であり、表象不可能だった生命の決着なのである。檻の内側は向こうなのか・むしろ、こちら側なのか、ちょっと今から動物園に行って考えてくるわ2010/09/01
百木
3
本書を参考文献とした「動物園の文化史」と重複もあるが、内容はさらに踏み込んだものも多々。日本の動物園や今後果たすべき役割への言及はより詳しい。第2章、動物と人間の断絶(擬人化の陥穽。動物の視線は眼差しではない)のような話は読み応えがあり面白かった。また、動物園の展示手法や歴史的資料や民話から考える日本人の動物観の章は息抜きのように読めた。展示手法のところは実際に動物園に行く前に読むと面白いと思う。2018/07/12
志村真幸
1
メディアという視点から動物園を切り取った特異な論集。 政治学の渡辺守雄が中心となり、美学の西村清和、デザインの柏木博、中世史の池上俊一といった、あまり動物園に関わってこなそうな論者を集めたところがおもしろい。独特の観点から動物園を語っており、とくに西村清和の論考からは、これまで思ってもみなかったような動物園像が浮かび上がってきた。 一方で、富山市ファミリーパーク、埼玉県こども動物自然公園のひとたちも執筆陣にくわわっている。彼らの語り口は、とても現実的。いま動物園が現場で抱えている問題が見えてくる。2022/01/23