多様性との対話 - ダイバーシティ推進が見えなくするもの

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多様性との対話 - ダイバーシティ推進が見えなくするもの

  • 著者名:岩渕功一
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  • 青弓社(2021/04発売)
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  • ISBN:9784787234834

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内容説明

多様性の時代だと言われる。多様な背景をもつ人材の活用が革新的な創造性を高めるとして、企業、政府、地方自治体、教育機関、NGO/NPO、市民団体で多様性/ダイバーシティを奨励する動きが活発化している。

多様性/ダイバーシティの推進は女性、LGBT、障害者などの社会的なマイノリティの存在に目を向ける一方で、有用で受け入れやすい差異を選別化することで、いまだ続く差別・不平等を見えなくするとともに、新たな包摂と排除を生み出してもいる。

多様性/ダイバーシティの推進により建設的に取り組むには、構造化・制度化された差別・不平等の複雑な作用を理解して、様々な差異を平等に包含する方途を考え続けること、つまり、多様性と対話することが必要不可欠である。

LGBT、ジェンダー、移民、多文化共生、視覚障害者、貧困、生きづらさ、当事者研究、インターセクショナリティ、教育実践――様々な分野の多様性との対話を通して、それらが抱える問題点を批判的に検証し、差別構造の解消に向けた連帯と実践の可能性を探る。

目次

第1章 多様性との対話 岩渕功一
 1 BLMとD&Iの取り違え
 2 「多様性/ダイバーシティ推進」が見えなくするもの
 3 日本での多様性/ダイバーシティ推進
 4 多様性との対話
 5 誰もが生きやすい社会に向けた横断的連携
 6 インターセクショナリティと連帯の可能性
 7 学び(捨て)の実践

第2章 ダイバーシティ推進とLGBT/SOGIのゆくえ――市場化される社会運動 新ヶ江章友
 1 ダイバーシティ推進とは何か
 2 経営学におけるダイバーシティ・マネジメントとは何か
 3 ダイバーシティ・マーケティングとLGBT/SOGI
 4 LGBTマーケティングと人権問題への意識

論点1 多文化共生がヘイトを超えるために 塩原良和

第3章 移民・多様性・民主主義――誰による、誰にとっての多文化共生か 高谷 幸
 1 多文化共生をめぐるこれまでの批判
 2 多文化共生をめぐる問い――「何」から「誰」へ
 3 誰にとっての多文化共生か
 4 移民にとっての多文化共生か、地域にとっての多文化共生か
 5 誰による多文化共生か

第4章 生活保護言説における「日本人」と「外国人」を架橋する 河合優子
 1 生活保護制度の歴史と現状
 2 生活保護言説と「日本人」
 3 生活保護言説と「外国人」

論点2 メディア研究における「ダイバーシティ」の現在 林 香里

第5章 「生きづらさからの当事者研究会」の事例にみる排除の多様性と連帯の可能性 貴戸理恵
 1 「個人化・リスク化した排除の苦しみ」としての生きづらさ
 2 当事者研究での個別性・多様性と共同性のつながり
 3 多様性に立脚したつながりとは何か

第6章 「同じ女性」ではないことの希望――フェミニズムとインターセクショナリティ 清水晶子
 1 「#トランス女性は女性です」
 2 インターセクショナリティ
 3 「交差」の誤解
 4 同じではないことの連帯

論点3 みえない「特権」を可視化するダイバーシティ教育とは? 出口真紀子

第7章 共生を学び捨てる――多様性の実践に向けて 小ヶ谷千穂
 1 「共生のフィールドワーク」という授業について
 2 体当たりの邂逅――「正しい共生」のプレッシャーからの解放?
 3 距離をとられる、という経験――自らのまなざしに気づく
 4 ミックス・ルーツの学生の経験――自分自身を問い直す

第8章 アート/ミュージアムが開く多様性への意識 村田麻里子
 1 多様性の砦としてのアート/ミュージアム
 2 多様性の奨励とその課題
 3 アート/ミュージアム実践が投げかける問い

論点4 批判にとどまらず具体的に実践すること 松中 権[インタビュー聞き手:岩渕功一]

あとがき 岩渕功一

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

テツ

19
ダイバーシティだの多様性だのと言った言葉は毎日のように耳にするけれど、それに纏わる諸々についていったいどれだけ理解しているのか。更に言うのなら本当にそれを心の底から望む人ってどの程度存在しているのか。基本的にみんな区別(差別)を好むのだという事実を踏まえながら、それを現実的な力として振りかざしてはならないという根本的なルールをどうにかして共有しなければ上辺だけでいくら多様性を尊重しましょうなんて口にしても無駄だと思うけどな。違いはある、違いは気になる。それでも迫害はいけない。それだけなんじゃないかなあ。2021/11/24

K(日和)

10
P.20より「本書の目的は、多様な差異を互いに認めあって平等に包含し、誰もが生きやすい社会へと日本を開いていくことに向けて、どのような視野、連帯、実践、学びが求められるのかを考察することである。」 現在日本各所で取組みが進みつつある(ように表面上見える)ダイバーシティ推進によって捨象されてしまう属性はないか。見せかけのダイバーシティ推進に鳴っていやしないか。それを各観点から考え批判することで、現に存在している差異を社会として包含し、差別構造を解消するためにどのように動くべきかを考察している。2021/12/28

jackbdc

6
バズワード化しているダイバーシティ推進に付随する多様な視点や論点の整理に役立った。前提条件として人間は差別や排除を行いがちな生き物である事を理解した上で、自身の感情や行動を素直に気付いて制御の方法を学ぶ事が不可欠だと思った。国籍、性別、性的趣向、障害の有無、経済状況等の項目には無自覚になりがち。そこに見えない「特権」が潜んでいるという視点を持つことは何らかの意識付けが無いと難しいと改めて考えた。また、個人的には雇用形態による賃金格差も差別(奴隷)だと捉えているのだが世間的には認知されていないのだろうか。2021/09/11

awe

6
「多様性」「ダイバーシティ・インクルージョン」という耳障りの良いお題目には常々違和感を感じていたが、そうした違和感を丁寧に掬い上げ学術的に議論した論文集が本書で、とても勉強になった。1章では、BLMMが多様性の称揚やD &Iといったスローガンに換骨奪胎されてしまう懸念について論じられている。要は、これらのスローガンが叫ばれることで、既存の差別構造はなかったこと或いは解決済みの問題となり、そうした「平等」な状態の中で互いに互いを尊重し合いながら生きていこうという「幻想」が作り出されるのである。これらは調和的2021/05/03

カモメ

5
外国人に関する記述が興味深かった。外国人住民が直面する困難の原因を個人の「文化の違い」とコミュニケーション不足に短絡し、経済的・社会的な不平等を軽視する傾向にあり、政府が目指すのは差異の承認より日本人と同様に「日本の言語と文化を教える」ことである。日本では、反差別や教育、政治参加への政策が弱いと言える。「外国人住民」の中に在留期間3ヶ月未満の移民は排除されコロナ禍の給付金も対象外であった。後半に述べられていた「共生」が強調されることで「われわれ」の同質性が安定的なものとして意識されてしまう事も重要な視点。2021/05/05

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