内容説明
「仲間をつくれ」「働け」。的はずれを含めた多くの批判にさらされ、「回復」へと駆り立てられるひきこもりの“当事者”たち。対人関係の獲得や就労の達成という「社会参加」とそうすることの意味のはざまで、「なぜ働くのか/なぜ生きるのか」と彼/彼女らが抱いている不安や焦燥を、聞き取り調査をとおして描き出す。そして、「自己防衛戦略」や「存在論的不安」などの視点から、“当事者”たちにとって「ひきこもる」とはどのような経験なのかを浮き彫りにする。必要なのは“当事者”に共感することではなく、むやみに「回復」をめざさせるのでもなく、彼/彼女たちを理解することだと主張・提言する社会学の成果。
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目次
はじめに
第1章 問題意識──フィールドでの経験から
1 はじめに
2 “対人関係の獲得”から“就労の達成”へ
3 〈社会参加〉路線の限界
4 当事者への否定的感情に向き合う
5 本書の課題──「ひきこもり」の当事者の経験を理解する
第2章 「ひきこもり」の社会的文脈
1 一九八〇年代──「無気力化した若者」
2 一九九〇年代──不登校からの分化
3 二〇〇〇年代前半──「ひきこもり」の社会問題化
4 二〇〇四年以降──「ニート」の登場
5 「ひきこもり」からの〈回復〉イメージの変転
第3章 自己防衛戦略としての「ひきこもり」
1 「ひきこもり」というスティグマ
2 生活誌的な匿名性の程度
3 精神的苦痛を助長されうるやりとり
4 自己防衛戦略としての「ひきこもり」
第4章 自己を語るための語彙の喪失としての「ひきこもり」
1 “対人関係の獲得”以後のきつさ
2 コミュニティに参与することの意味
3 自己を語るための語彙の喪失としての「ひきこもり」
4 専門家言説の功罪
第5章 人生における危機/転機としての「ひきこもり」
1 ひきこもるという経験の二面性
2 危機
3 転機
4 振り返って見えてきた危機
5 自己変容の様相
6 「ひきこもり」を“状態”ではなく“過程”と捉える
第6章 問うという営みとしての「ひきこもり」
1 はじめに
2 “対人関係の獲得”その後
3 就労をめぐるジレンマ
4 自己・労働・生を問う
5 問うという営みの必然性
第7章 生きていくことを覚悟する
1 「ここで決めよう、と思ったのね。生きていくか、やめるかをね」
2 「突然、生きたいって、体の声を聞いて」
3 生きていくことを覚悟する
第8章 「ひきこもり」再考
1 存在論的不安としての「ひきこもり」
2 「ひきこもり」からの〈回復〉とは何か
3 〈実存的問題〉としての「ひきこもり」
あとがき
感想・レビュー
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ゆう。
とらじろう
あかたけ
Yoshitaka Sakai
まつゆう