「心の闇」と動機の語彙 - 犯罪報道の一九九〇年代

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「心の闇」と動機の語彙 - 犯罪報道の一九九〇年代

  • 著者名:鈴木智之
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  • ISBN:9784787233660

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内容説明

神戸連続児童殺傷事件など、1990年代の犯罪事件の新聞報道を追い、「心の闇」という言葉が犯罪や「犯人」と結び付くことで、私たちの社会に他者を排除するモードをもたらしたことを明らかにする。そのうえで、他者を理解し関係を再構築していく方途を示す。

目次

はじめに

第1章 「心」を「闇」として語るということ
 1 犯罪報道と秩序意識
 2 「動機の語彙論」という視点
 3 動機をめぐる問いの焦点としての犯罪
 4 「逸脱の文化」の消失と「心の闇」言説の浮上――一つの仮説的視点
 5 「動機規則」の適用――理解可能なものと不可能なものの一線を引く行為

第2章 「心の闇」の浮上――酒鬼薔薇事件(一九九七年)までの新聞報道から
 1 「闇」として語られ始めた「心」
 2 露出する闇――地下鉄サリン事件(一九九五年)
 3 解き明かされざる「闇」――酒鬼薔薇事件(一九九七年)
 4 「心の闇」の修辞学

第3章 「動機」が「わからない/わかる」と言うこと――「酒鬼薔薇聖斗」をめぐる大学生たちの語りから
 1 「心」は本当に「闇」のなかなのか?
 2 「「どうして」を教えて」――ある新聞記事に基づく“問いかけ”の試み
 3 動機がわかる/わからない、と語ること
 4 なぜ「動機はわからない」のか――動機規則の構成
 5 自己提示の方法としての“わからない/わかる”と言うこと
 6 代替的な説明言語の要求

第4章 「心の闇」の定着――一九九八―二〇〇〇年の新聞報道から
 1 リンクの広がりとイメージの定型化――一九九八―九九年
 2 母親たちの「心の闇」――音羽幼女殺害事件(一九九九年)
 3 「十七歳」の「心の闇」――二〇〇〇年の「酒鬼薔薇フォロワー」たち
 4 「心の闇」の行方――法改正の動きのなかで

第5章 対話としての動機の語り
 1 〈他者〉との遭遇
 2 「物語モード」と「論理―科学的モード」
 3 「起動原因」と「構築原因」
 4 疾患カテゴリーが動機理解に取って代わるときに起こること
 5 秩序意識の変容
 6 物語の力を呼び戻すために

おわりに

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

うえ

10
「「心の闇」は、2000年以降も語り続けられている…新聞記事についてみれば、この言葉は、数のうえではむしろ1990年代を上回る頻度で使用されている。だがそれはどこまで「時代の表徴」であり続けているだろうか…しかし、全体としては、その使用頻度に反比例して表現としてのインパクトは弱まっている印象がある。「心の闇」は慣用句となり、その語りはこの語彙の登場時期に伴っていたような"熱気"を失っているように見える。そのラベルは、「動機が不可解である」ことを示す記号としてさまざまな事件に貼り付けられている」2018/11/06

モルテン

5
犯罪の動機を「心の闇」という言葉で表現することによって、私たちは、<他者>とどのような関係を結ぼうとしているのだろう――という問いに貫かれた一冊。「動機」はそれを語る側と受け取る側との相互行為で構築されていくもの、という考えになるほどと思った。そして、それは(動機の)物語を作るということでもある。本書の最後のくだりにちょっと感動。たとえ「虚構」だとしても、私たちは<他者>と対話し、物語を作り続けなくてはならない。2014/02/14

yamikin

4
「俺を怒らせたのでアイツを殺しました」という殺人者の証言が不可解なのは、彼なりの理由付け(起動原因)が、周囲(社会)からすると「でもだからといって殺すのは理解できないよ!」というツッコミ(構築原因が理解できない!というツッコミ)を受けるからだ。あるいは「アイツは○○病だから、ロリコンだから幼女を殺したんだ」という「分析」もまた、本人の殺人の動機を説明することにはなっていない。ロリコンが即殺人犯にはならないからだ。こんな風に「動機」について分析してるんだけど、ちょっと当たり前すぎてなんだか拍子抜けだったな2014/01/20

chaco

2
酒鬼薔薇事件の新聞の分析を通して、犯罪者を理解できない他者として自分たちとは一線を画す態度を指摘する。筆者もあとがきで書いているように、今は理解することを最初から諦めているところがある。当時はまだ理解しようとする態度があったのだと逆に新鮮に感じた。2014/05/22

yam6

1
犯罪者の動機を理解することを放棄したとき、「心の闇」という言葉が使われる。著者は、精神医学の専門家などの解説を待つという態度ではなく、「物語」として犯罪者の行為を了承していく作業を続けるべきだと綴る。そして、自分たちがいる「普通」のひとびとの世界から、犯罪者をはじき出すのでなく、社会の一員としての犯罪者がその犯罪行為に至った過程をナラティブに共有しようという努力を続けるべきだという。はっきりいって、現代の社会では到底受け入れられない主張だろう。2016/08/20

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