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内容説明
滑稽、悲哀、苦悩、歓喜、陶酔……。奇蹟としか言いようのない深い洞察力によって人間のあらゆる感情を舞台の上に展開させたシェイクスピアの全劇作を生きた日本語に移した名翻訳。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まふ
103
ジュリアス・シーザーがブルータス他の反対派に刺殺され、跡を継ぐオクタビアヌスの攻撃に敗れて自刃する、という有名な史実に基づく史劇。シェイクスピアはこの骨子を「プルタルコス英雄伝」から取り、いくつかのオリジナル場面も加えているようだ。興味深いのは第4幕第3場のブルータスと義弟のキャシアスとのお互いの人格をかけた長い口論の場面。どういうわけか「決裂」とならず友好関係が戻ってしまう。なぜこのような数ページにわたる口論場面をわざわざ入れたのか。不思議だ。かくして、シェークスピアは読むほどにいろいろと楽しいです。2023/07/29
マンセイ堂
21
作中に出てくる「お前もか、ブルータス!」という言葉は知っていたのですがその後にシーザーが「もはや死ぬしかないぞ、シーザー!」と叫んだのは、今回読んで始めて知りました。多くの裏切りの刃よりも、信頼した部下1人に刺された事実の方が、シーザーにとって、受け入れ難いものだったのですね。2013/07/06
アヴォカド
12
『ローマ人の物語』の該当巻を読んだ後でこれを読むと、シーザーやブルータスのイメージはこれに引っ張られてたんだなーということが、よくわかりますね。ところで、「あの気高いおからだも悲しみにあふれる杯だ」というセリフがありますが、もしやもしや、高橋和巳『悲の器』はここから…??今更だけど。でもまだ誰も指摘してなかったら大発見かも⁈ ( たぶんそんなことはないね)2021/01/27
柏もち
11
「これこそは人間であった!」ブルータスが主人公。高潔の士らしいが、友であるシーザーに話をしに行って問いただしもせず、周りの言うことを鵜呑みにして情報の精査もせず、即座に殺しに走る愚かさがある。それを含めての上記の言葉かと思うとちょっと深い。ブルータスとその妻ポーシャが、胸の内を打ち明けてほしいと願う対話が印象に残った。現代でもあるあるな話だから。解説にある「『一見、ひじょうに明快なドラマ』でありながら『読者・観客の関心のもちかたによって、さまざまな音色をひびかせもする』」に納得。2016/04/29
yu
8
権力を着々とたくわえるシーザーを、ブルータスらはローマのため、と自らに言い聞かせ暗殺する。彼は自らの正当性を演説し、民衆の心を掴みかけるが、アントニーの演説によって阻まれ、窮地に立たされる。結局、ブルータスはアントニーらに追い詰められ、自殺する。 ここからは単なる想像に過ぎないが、ブルータスはシーザーを殺したのは、本当に正しかったのかという葛藤があったのではないだろうか。そう考えると、劇中に現れるシーザーの亡霊は、ブルータスの内なる声で、それがために亡霊はブルータス以外は見えなかったのかもしれない。2015/04/18