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内容説明
滑稽、悲哀、苦悩、歓喜、陶酔……。奇蹟としか言いようのない深い洞察力によって人間のあらゆる感情を舞台の上に展開させたシェイクスピアの全劇作を生きた日本語に移した名翻訳。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
379
史劇。作品を一読する限りでは、リチャード2世は長年王位にあった初老の王に見えるのだが、史実では彼が亡くなった時点で33歳なので、青年期後半から壮年の初めといった年齢であったことになる。そうしてみると、ボリングブルックによる王位の奪取は世代交代的なものではなく、むしろ価値観の大いなる転換だったことになるだろう。すなわちプランタジネット朝(リチャード2世)からランカスター朝(ボリングブルック=ヘンリー4世)への移行は単に王朝の交代なのではなかったということになるだろう。シェイクスピアがここで描いたのは、⇒2021/10/17
ケイ
156
イギリスの歴史、特に王の継承の話は全く知らなかったので勉強になった。この作品の舞台以前の知識もないために本書の理解もなかなか難しい。リチャードの父は偉大であったが若くして亡くなり、幼い息子のリチャード2世が後を継ぐも、補佐役として周りを固めた叔父たちとの軋轢が破滅につながったように思う。自分へ破滅を告げたノーサンバランドへのリチャードの呪いの言葉が何かを暗示しているのだろうか。リチャードの叔父の一人、ヨーク公の忠義とは何なのか。その時の王に仕えることが正義だとしたら、それはただの盲従ではないかと思える。2017/04/17
まふ
110
リチャード2世(エドワード黒太子の息子)はプランタジネット王朝最後の王で10歳で即位し34歳で従弟のヘンリー・ボリングブルック(=ヘンリー4世=ランカスター王朝初代)との覇権争いに敗れて刑死した。この戯曲は全編が韻文で書かれてあるとのことなので、原文を引っ張り出してつらつら眺めてみた。確かに語尾で韻を踏んでいる文やリズミックな言葉の繋がりや繰り返し、反復的な記述があり、これを指しているのかな、と思う。とは言え、詩ほどの明確な韻文とは言えない気がする。いつか暇が出来れば少し調べてみたい。2023/12/21
藤月はな(灯れ松明の火)
85
「イギリスの石田三成がもし、国主になったら」とも言えるでしょう。英国王で最も美形で余りにも自分の言い訳をせずに合理主義だったが故に憂き目にあったリチャード二世。物語が進むにつれて人望の無さを受け入れても王としての素質に悩む彼が好ましくなる。ボリングブルックとモーブレーの喧嘩の仲裁には血ではなく、国外追放にしたのは合理的ですしね。王の凋落を予感した庭師の気遣いが救い。そして王妃の「甘い顔をして人を誑かす希望など、私は憎みます。希望は所詮、おべっか使いの寄生虫」という言葉はベタだけど、的を得ていると思います。2017/04/09
きいち
33
先日友人に誘われて何の事前情報もなく吉田鋼太郎の「ヘンリー五世」の舞台を見た。劇場の会員になってる彼女から聞いて、そういえば蜷川幸雄のシェークスピア全作品上演のプロジェクトを引き継いだことがニュースになってたと思い出した。歌舞伎と同様、ベース知らないと楽しめない感じだったのが悔しくて、まずはテキストを読んでみようとすると四部作だという、ならばとまずはこれから。筋立ては単純だが、暗君?リチャードと思ったらキャラも長台詞も何通りにも楽しむことができそう。まだまだ入口としか思えないが、よし、ヘンリー四世いくか。2019/03/13