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内容説明
滑稽、悲哀、苦悩、歓喜、陶酔……。奇蹟としか言いようのない深い洞察力によって人間のあらゆる感情を舞台の上に展開させたシェイクスピアの全劇作を生きた日本語に移した名翻訳。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まふ
121
初読。シェークスピアの悲劇の中でも悲劇性が強く、好まれて来なかったといわれる作品。ローマのゴート族征討軍司令官タイタス・アンドロニカスは、故皇帝の息子兄弟などや捕虜として連れてきたゴート族の女王タモーラとその息子たちに冷遇され、自分の息子たちを殺されたり娘のラヴィニアも強姦の上両手首と舌切断という拷問を受けたりする。が、最後に息子のリューシアス率いるゴート族軍のローマ進軍により悪者どもを懲らしめる、という話。全般的に残酷度が高く、読むのが辛い物語であったものの、シェイクスピアらしい物語展開であった。2023/07/27
藤月はな(灯れ松明の火)
51
読み比べでPSYCHO-PASS(漫画版)での引用はちくま文庫であると判明。アーロンと逢引きしているタモーラにラヴィニア達が文句をいう場面で「ラヴィニア、本心であってもそれは言っちゃ駄目!」と叫ぶしかない。女にとっての屈辱は三つある。プライドをかなぐり捨ててまで懇願したのに大切な者を奪われること、自分より愚かな男に所有物として扱われること、そして自分より美貌で年が若く、未来がある女に偉そうに言われることなのだから。子供への愛以外は悪を賛美するアーロンの描写が「リチャード3世」の人物造形の礎になっただろう。2014/08/19
Major
39
【 Note5 】Note2からタモーラの台詞を追いながらいかに母性性が男性性へと変貌していったかを観てきた。ここからは、タイタスの父性性の減退、喪失を観ていこう。それはとりも直さず、タイタスがアンドロニカス一族の家父長の責務とローマの大将軍(武人)の誉をかなぐり捨て、いかに自らの恥と汚名を晴らすために、復讐の私人と化していったかを観ることになるだろう。2024/10/30
Major
38
「3世紀の危機」と呼ばれた混乱時代の古代ローマ帝国を舞台にした復讐劇とも悲劇とも言われる。国家や権力が滅びゆく時代や革命の時代を映す演劇は荒々しく、野蛮で勇ましい。虚空間であることを知った上で観客も鑑賞する《身体と声の表現芸術である》舞台劇ではそうした時代背景の悲惨をデフォルメして創作することで、逆にリアリティをステージ上で描出しうるであろう。むき出しの欲望と復讐の情念と共に切刻んだ身体が、舞台の進行役を果たすこの戯曲は、ロンドン辺りの大衆を惹きつけ、かなりの上演回数をこなしたことだろう。コメントへ続く2024/10/20
Major
35
【 Note I 】この作品の人物造形と悲劇へ至る展開は、言うまでもなく、かの四大悲劇へのモチーフとして引き継がれている。初めてこの作品を読んだ時に、復讐劇ではあるが、どこが悲劇なのだろうかと訝った。そして誰の悲劇かと?タモーラの悲劇であってもおかしくないだろう。だが今回これがタイタスの悲劇だと確信した。では、それは息子を殺されたこと悲劇か?それとも、ラヴィニアが強姦され、手首や舌を切り取られたことの悲劇か? コメントへ2024/10/21