- ホーム
- > 電子書籍
- > 教養文庫・新書・選書
内容説明
滑稽、悲哀、苦悩、歓喜、陶酔……。奇蹟としか言いようのない深い洞察力によって人間のあらゆる感情を舞台の上に展開させたシェイクスピアの全劇作を生きた日本語に移した名翻訳。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まふ
113
百年戦争期、ジャンヌ・ダルクの活躍と薔薇戦争の発端の様相が描かれる。ヘンリー5世によって勝ち取られたフランスにおける英国の領地が回復するが、英国から見れば敗退そのものである。トールボット卿の獅子奮迅の活躍もヨーク家とランカスター家との確執により見殺しにされる様がリアルに描かれる。ヘンリー6世は休戦によりフランス側のレニエ大公の娘マーガレットを娶り、メデタシとなる。史実を踏まえているとは言え、迫力ある描写でシェークスピア史劇の中でも出色の出来栄えではないかと思う。2023/12/30
藤月はな(灯れ松明の火)
83
シェイクスピア戯曲で最も長編であり、『ゲーム・オブ・スローン』の原点ともなった薔薇戦争を闊達に描く。ヘンリー五世時代に仏国と和睦するもフランスは反旗を翻し、リチャード二世時代の遺恨で内患外憂。ジャンヌが無垢とは言え、敗者への言葉での辱めは酷すぎる。そしてその力が神のご加護でもなくて、悪霊たちを使役していたという描写にどうしても引いてしまうのだ。ジャンヌといい、マクベス夫人といい、自分の意思を持って男を動かす女に対し、容赦ない描写に「シェイクスピアって女嫌いなのかな・・・」という考えが浮かんでしまうのだ。2017/04/21
かふ
23
敵国からみたジャンヌ・ダルクは淫売な魔女だった。イギリスもオルレアンの戦いで負けたのはイギリス内部での仲間割れがあったから。王の力が絶対的ではなく各派閥に対立がある。その中でフランスの武将は寝返る(ジャンヌの誘惑)。負けも当然の結果。その中でタルボット親子の負け戦は『平家物語』のようで盛り上がたが他の戦いはいまいち盛り上がらない(負け戦だからか)。ジャンヌ処刑のあと、最後はフランスとの和解で王妃マーガレットがヘンリー王と政略(策略)結婚で終わる。ジャンヌのお転婆ぶりとマーガレットの従順さが対比されている。2020/12/18
ネロ
18
ヘンリー6世の0〜9才辺りが描かれる。ここでジャンヌ・ダルクきたー!!(出てくるの知らなかった←)ジャンヌといえばミラ・ジョヴォヴィッチ主演映画のイメージが強く勝手に寡黙で闇を抱えた印象だったのだけれど、こちらシェイクスピアではお転婆な娘の様相。そしていつまで経ってもまとまらないイギリス国内を紐解こうと家系図を調べてみたら、フランス含めて近親婚が酷いな。その上で生まれた順番順位がトラブルの元らしく、3男の家系を差し置いて4男の家系であるヘンリーが王なのが大きな原因だったとやっと理解。これから薔薇戦争か。2022/11/19
うた
15
内患外憂。ヘンリー五世の死やジャンヌの登場から始まるフランスの反攻とイギリス国内でのヘンリー六世の側近たちの軋轢、嫉妬、内輪揉め。イギリス史を知らないと楽しめないかと思っていたけれど、史実か否かを問わず一人一人がよくよく書き分けられ、くっきりした人格をもっており、つりこまれるように読んでしまいました。こうして諍いは着実に薔薇戦争へと向かうわけですね。2016/03/22