- ホーム
- > 電子書籍
- > 教養文庫・新書・選書
内容説明
滑稽、悲哀、苦悩、歓喜、陶酔……。奇蹟としか言いようのない深い洞察力によって人間のあらゆる感情を舞台の上に展開させたシェイクスピアの全劇作を生きた日本語に移した名翻訳。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
338
本編は悲劇にも喜劇にも該当しそうもなく「ロマンス劇」に分類されているようだ。大筋を言えば、タイトルロールのペリクリーズが海原を遍歴する物語であることからすれば、ユリシーズ(オデュッセイア)が下敷きになっているのだろうかとも思うが定かではない。また、発端の謎解きによって王女を得る云々は、プッチーニのオペラ「トゥーランドット」の物語を想起させるが、これも後が続かない。紆余曲折の末に、最後はめでたく大団円を迎える。その存在がなければ成り立たなくなるくらいに説明役の詩人ガワーが劇の進行をつかさどる。2022/03/26
まふ
90
喜劇でもなく悲劇でもない「ロマンス劇」に分類されるという。詩人ガワーが舞台まわしで重要な役割を果たす。近親相姦で始まるがペリクリーズが登場するに及んでダイナミックな展開となり、スケール感のある芝居となる。様々な劇的要素を取り込んだためか物語としてはドキドキ感もあって楽しめる。マリーナが売春宿に放り込まれてどうなるのだろう、と心配するが、逆に悪辣な連中を折伏して自らの純潔を保つ、などとまさにおとぎ話的な痛快さであった。2023/10/06
fseigojp
27
これ辻村寿三郎の人形劇でやってほしい ジェットコースター・ロマンス劇2015/10/28
roughfractus02
9
ギリシャ悲劇と喜劇を融合する場合、近代作家は祝祭的場面や人物の関係性の逆転を物語の中に据えた(cf.ドストエフスキー)。本書は前半の近親相姦と放浪と後半の再会と恋愛の成就を物語の線状的時間で繋げる。繋げ役は語り手で実在の中世イングランドの宮廷詩人ガワーであり、彼の原作『恋する男の告解』を挿入した本作では、その道徳的な語りが古代の2つの劇構造を橋渡しする(ガワーの語りも「私」から「我々」へ変わり、登場人物との連帯感を強める)。こうして重々しい悲劇が軽快な喜劇へと加速すると、劇自体も観客に向けた祝祭に変わる。2019/12/11
うた
8
ガワーという時の魔術師に運ばれて、ペリクリーズはオデュッセウスもかくやという波乱に満ちた人生を送る。最初の解いても死、解けなくても死という謎掛けで、これはオイディプスかな?と思っていたら、主筋とは関係のないところで決着したりと、いろいろとジェットコースターではある。いや、この急転直下こそがロマンの本質なのかもしれない。2015/07/21