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内容説明
滑稽、悲哀、苦悩、歓喜、陶酔……。奇蹟としか言いようのない深い洞察力によって人間のあらゆる感情を舞台の上に展開させたシェイクスピアの全劇作を生きた日本語に移した名翻訳。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まふ
102
ヘンリー6世とマーガレットの婚儀も無事終わるが宮廷内でのウィンチェスター枢機卿とグロスター公との争い、グロスター公夫人エリナーの魔術の集いなど騒擾の種は絶えない。ヨーク公リチャードは自らの王位正統性を訴えて勢力を蓄える。グロスター公は反逆罪で失脚する。アイルランドの反乱鎮圧の指揮官となったヨーク公は英国全土に反乱の動きを起こさせ鎮圧名目で軍を起こす。貴族は2派に分かれて戦うがランカスター派(王側)は劣勢になり一旦ロンドンに戻る。と、ここまで、歴史の流れ通りの進み具合でますます面白くなる。いよいよ第3部だ。2023/12/31
藤月はな(灯れ松明の火)
73
借りてきた猫はその牙と爪を剥き、宮廷での諍いという火種に火がつき、燃え上がる。『ゲーム・オブ・スローン』でのサーセイのモデルはマーガレットだったんだな・・・。高潔なグロスター公は妃の企みで地位も名誉も汚された上で引き摺り落とされる。そして子供らは簒奪者の子孫の癖に王に就けた世を覆そうと誓う。騙されやすいヘンリーの無垢さにイラッとする。一方で残虐な反逆者でもあるジャック・ケードが腹ペコで食べ物を探しに出かけたら見つかって殺されたというエピソードには人間味があるからこその笑いと同時に悲哀を感じてしまう。2017/04/24
かふ
24
存在感がないというか影が薄い「ヘンリー六世」王は「決められない」王だった。そもそも王権が世襲制だから王に成ったものの側近が親戚の叔父さん連中だから上手く対処できないのだった。そこにフランスから嫁に来たマーガレット。長男が誕生して権力に目覚める。子供を産むと「母は強し」になるんだな。従順だったマーガレットが王の主導権を握るようになるけどやっぱり親戚連中は侮れない。マーガレットの変化が読みどころ(演劇なら見どころか?)。マクベス夫人の前段階。マーガレットを演られれば女優賞も間違いない。2020/12/19
ネロ
18
王妃マーガレットの1部と2部との違いがすごい。。第一部では見目麗しい清純淑女の印象を受けたのだが...王妃という権力なのか著者シェイクスピアの想いの反映なのか、マクベス夫人を思わせる激烈な欲がみえて恐ろしく感じた。その王妃の力強さが、終盤の情けない王ヘンリーのお尻を叩いている様子なので、3部では王の力となるかどうか楽しみ。話としては戦争の少ない政治が全面な2部ではあったが、終盤王側を中心に主要人物の立て続けの死と、ヨークの謀反でロンドン塔に逃げようとする王側の戦がヒリヒリさせる展開に。薔薇戦争幕開けだ2022/11/20
うた
11
かくして忠臣は謀略によって殺され、心優しい王は相噛む蛇に取り囲まれる。多すぎる世継ぎは常に争いの種となり、肉親同士が互いを刈り取る鎌となる。内乱というのは痛ましいものだ。アイルランド軍を率いるヨーク公に追われたヘンリー六世の命運や、いかに。2016/03/26