内容説明
昭和20年(1945)敗戦間近に大阪府知事の要請をうけ農務課嘱託となり、食料需要対策のため府下の農業の実情を調査して答申した「復命書」はじめ、終戦直後から農村復興のために農業技術・経営、生活改善等の指導をして全国各地をまわり、戦後の農業問題に取り組んだ著述を収録する。問題解決への具体的提言をともなう各篇に、民俗学を「体験の学問であり、実践の学問である」と言う宮本常一の姿勢を読むことができる。
目次
戦争末期大阪府下農村の実情
新農村への提議――食料増産を中心に
生産と家族制度
土地均分制について
二つの町村に対する感想
女の寿命
村の生活
預け牛
農業経営私見
開拓地営農の基本課題
最近の農業技術
丸木先生の多収穫育苗法
渋沢敬三氏の一面
農村研究所だより
旅へ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きいち
17
戦時下の大阪で農村を回った報告書と、農地解放など戦後改革のまっ只中、各地の篤農家を対象にした雑誌「新自治」などでの文章たちからなる。前者は戦争遂行のため、後者は新日本の建設のためと、理念や主義からすれば真逆だけれど、宮本にはそんなの関係ない。自らも鍬を振るい、「実行するのは農民」「百姓仕事が楽しくなるように」、根っこにあるその思いにはブレはない。◇種、苗、土、肥料、畝だて、農具、そして区画整理に共同購入、農業簿記と、各地で工夫し試された施策を共有して「少しでも良く!」をつなぐ。まさに、プラグマティズムだ。2013/12/23