目次
塩の民俗
塩の道
入浜以前の製塩法
塩の生産と流通にともなう習俗
塩と生活
塩と習俗
塩随想六題
浜旦那家の民具
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きいち
31
宮本常一が畑作農業や漁業、林業とともにテーマとした「塩業」についての一冊。塩があることが当たり前、という今の我々の状況が、歴史的にどれほど特殊なことか思い知らされる。忘れられた産業への宮本の視線の強さ。◇砂浜に海水を撒き、夏の太陽で水分を蒸発させて濃度を上げ、最終的に煮詰めて…という途方もない工程。海から離れた山村にとっての切実さ。購入量、消費量(味噌も醤油も自製だ)を解き明かしていく過程もおもしろい。塩の各ポイントを全国各地の協力者へのアンケートを資料に明らかにしてくのって、まんま柳田民俗学のメソッド。2016/11/28
西澤 隆
4
重いものを大量に運び上げるというのは本当にキツい仕事。だから揚浜式製塩があった浜での聞き取りで、製塩が祭りと結びついている浜では楽しい記憶もあるのに祭りが絡んでいない浜は「すぐにでもやめたい」仕事になっているなど、製塩地での聞き取りを一つ一つ読んでいくとあらためて「喰うだけで精一杯」の生活がついこの間まであり、それが今とはまったく違う暮らしなのだと痛感する。山の人が燃料の木を川に流して河口まで赴き自ら塩を煮るような「交易前」製塩が明治期まで残っていたりと塩を通して知る正史では気付けない日常の記録なのです。2016/12/19