内容説明
“自然は寂しい、しかし人の手が加わると暖かくなる”と、宮本常一は言う。けやき、茶、桜、杉、くぬぎなどの木々がおりなす武蔵野の風景は自然の風物ではなく、人々が一本一本植えることによって作り出されたものである。こうした武蔵野の第二自然形成の歴史に象徴される日本人の自然への対し方をはじめ、衣食住・こころのありようと森林花木とのかかわりをめぐる諸篇を収録する。柳宗民氏との対談も収載。解説=西山妙
目次
日本人と自然
山の自然
マツと日本人
花と民俗
風景をつくるこころ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きいち
31
宮本が見る日本人の自然は、もちろん戦うべき敵ではないが、ただ風流に眺めるものでもない。共に生活を作ってくれるもの、とでもいうべきか。マツ、スギ、ウメ、サクラ、ツツジ、キク、ハス…建材や船の材料に使い、風を防ぎ、食用にし、そして日々の祈りの道具へと、あくまで庶民が使う対象としての植物たち。こうして新たな風景が出来上がる。◇塩を作るために禿山となった瀬戸内の島、新田開発に失敗して苦しんだ武蔵野。ただ昔が良かったわけではない。邪険にすればと酷い目に合い、丁寧に扱えば豊かさをもたらす。大切なのは知ること、なのだ。2018/05/05
マウンテンゴリラ
2
庶民としての日本人の自然観を、山野、花木との関わりを中心に描いた民俗誌と言えるだろう。著者自身の豊富な実地調査と卓越した観察眼によって、古来からの日本人の自然との付き合い方が、生き生きと甦ってくるように感じられた。狭い国土の中で、日常生活の中で実用面でも利用しながら、自らと一体のものとして、自然と付き合ってきた先人達にあらためて敬意を感じた。反面、そのような習慣を忘れ、植物の特性や利用方法さえ知らず、人工的な利便性を優先させる一方、概念的な自然保護に傾きがちな現代の日本人に危うさを感じた。2014/12/16
杣人
0
「日本人は自然を愛し、自然を大事にしたというけれど、それは日本でも上流階級に属する一部の、自然に対して責任を持たぬ人たちの甘えではなかったかと思う。自然の中に生きた者は自然と格闘しつつ第二次自然を作り上げていった。」優れたフィールドワーカーであった宮本の観察眼は、植生にも及んでいた。歴史学において植生の歴史的展開が注目されるようになったのは21世紀以降であるが、昭和40年代に宮本は上記のような指摘を行っている。2024/12/31
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