内容説明
昭和33年、黒部の絶境に2億トンの水をせき止め、高さ186mのダム本体工事が始まった。当時関西の電力需要はひっ迫、工期の遅れは許されなかった。工事責任者は、間組の大マムシこと中村精。作業員は全国から集められた若者2000人。工期短縮のため、作業の遅れは許されない緊迫した現場だった。しかし、過酷な自然は襲いかかる。伊勢湾台風の直撃、大雪崩。それでも、電力を生み出すため作業員たちはあきらめなかった。
感想・レビュー
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あきあかね
17
戦災で焼け落ちた名古屋城の再建、船が錯綜する東京湾の安全のための海上交通システムの創出などいずれのプロジェクトも印象深いが、圧巻はやはり黒四ダムの建設の話だった。延べ一千万人が携わった未曾有の規模だけでなく、その過酷さも凄まじかった。「黒部にけがはない」という言葉のように、峻厳な黒部峡谷では事故は即、死を意味した。資材を運ぶためのトンネル工事では脆弱な破砕帯に遭遇し落盤に怯え、溢れ出る雪解け水に凍える一方、火山帯にぶつかった地下導水路建設では百度の熱湯が吹き出す灼熱地獄となる。⇒2021/10/30