内容説明
「忘れかけていた古いノートをひっぱり出してみた.最初のページに1952年4月/1953年8月という日付がある.その間に書いたソネットを鉛筆で清書したもので,全部で98篇ある.それぞれの詩の肩に薄く丸や半丸や三角の印がついているが,これは私の父がつけたのだ.他に「詩学」とか「歴程」とか「文学界」とか「小説公園」など雑誌の名前も書いてあるが,果たして掲載されたのかどうか記憶がさだかではない.1953年に,『六十二のソネット』という詩集を,その98篇から父の助言を参考に取捨選択して編んだ.その後2009年に,残りの36篇を追加した.」
目次
目 次
文庫版まえがき〔講談社+α文庫版〕
62のソネット+36
Ⅰ
1 木 蔭[朗読]
2 憧 れ
3 帰 郷
4 今 日
5 偶 感
6 朝 1
7 朝 2
8 笑 い
9 困 却
10 知られぬ者
11 沈 黙
12 廃 墟
13 今
14 野にて
15 鋳 型
16 朝 3
17 始まり
18 鏡
19 ひろがり
20 心について
21 歌
22 姿について
23 雲
24 夢
Ⅱ
25 (世界の中で私が身動きする)
26 (ひとが私に向かって歩いてくる)
27 (地球は火の子供で身重だ)
28 (眠ろうとすると)
29 (私は思い出をひき写している)
30 (私は言葉を休ませない)
31 (世界の中の用意された椅子に座ると)
32 (時折時間がたゆたいの演技をする)
33 (私は近づこうとした)
34 (風のおかげで樹も動く喜びを知っている)
35 (街から帰ってくると)
36 (私があまりに光をみつめたので)
37 (私は私の中へ帰ってゆく)
38 (私が生きたら)
39 (雲はあふれて自分を捨てる)
40 (遠さのたどり着く所を空想していると)
41 (空の青さをみつめていると)[朗読]
42 (空を陽にすかしていると)
43 (あふれた空の光を)
44 (私は闘士であったから)
45 (風が強いと)
46 (若い陽がひととき)
47 (時が曇った夜空に滲みてゆく)
48 (私たちはしばしば生の影が)
Ⅲ
49 (誰が知ろう)
50 (存在のもつ静寂は時に)
51 (親しい風景たちの中でさえ)
52 (私がこの野を歩いている時)
53 (影もない曇った昼に)
54 (私と同じ生まれのものたちから)
55 (無為のうちに)
56 (世界は不在の中のひとつの小さな星ではないか)
57 (私が歌うと)
58 (遠さの故に)
59 (云い古された言葉を云うだけで)
60 (さながら風が木の葉をそよがすように)
61 (心は世界にそっと触れる)
62 (世界が私を愛してくれるので)
未発表36篇
1 朝
2 留 守
3 (なべてのむなしいものよ)
4 (歌うことが死を攻める)
5 (眠っていた)
6 (背負うこと)
7 (もしかすると……?)
8 今 日
9 (黙っているすべての前で)
10 (むしろ私の幻の中に)
11 夜の業
12 忘れ去られて
13 (ただ限りなく知られぬことがある)
14 高貴な平手打
15 口答え
16 伴 奏
17 ふたつの心
18 私の旅
19 挨拶の必要[朗読]
20 工 場
21 かつて神が
22 ある警句
23 雪
24 (何気なくうつってゆく午後の陽差の中にいると)
25 (不幸を知った時に)
26 (ささやかなひとつの道を歩き続けると)
27 (同じ陽 同じ空)
28 (小鳥らは虫を)
29 (私は華麗な模様の上を)
30 (はなれていると)
31 (世界を見廻していると)
32 (静かな愛のように)
33 (何かが微笑みのように私の傍を過ぎて行った)
34 (それは夏の初めであった)
35 (闇の中で)
36 (どんな小さな憩いが)
あとがき〔二〇〇九年初版〕
英語訳