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内容説明
輝くように美しい姫君の幸せを意地悪な継母が妬み、迫害する。苛めを逃れて、都から遠く離れた住吉に隠れ住む姫君のもとへ、霊験あらたかな長谷観音の夢告と琴の音に導かれ、男君の四位少将がやってくる。再会したふたりを待ち受ける結末は――? 『源氏物語』よりもわかりやすく、物語性に富んだ平安時代の傑作『住吉物語』。紫式部や清少納言ら平安貴族たちを夢中にさせた、日本版「シンデレラ・ストーリー」の全文を丁寧に解説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
双海(ふたみ)
13
『住吉物語』の文庫本は本書が初とのこと。私も読者の一人として嬉しく思う。継子苛めの物語としては『落窪物語』も有名であるが、『住吉物語』と比較しながら読むと面白い。たとえば、『住吉』では父が姫君に愛情を注いでいる点や、継母の娘である中の君や三の君が姫君と仲が良い点など、『落窪』と異なる部分がある。『住吉』は『枕草子』『源氏物語』よりも前に成立したが、現在伝わっているテキストは後世の改作であり、原作や古写本も残っていない。研究者泣かせではあるが、見方を変えればそれほど人々に愛されてきた物語とも言えるだろう。2023/12/14
ゆずきゃらめる*平安時代とお花♪
13
「住吉物語」という古典を最近知って早速ビギナーズで初読み。ある本でも有名な継子譚。「落物語語」みたいで面白かった。女性作家が書いたといわれているから父親の愛情が違う。けど住吉に赴くまでがなかなかじらされた。古典をよく読むようになってから短い古文ならわかるようになったよ~ 2023/11/23
若黎
11
継子いじめのドキドキ感や、シンデレラストーリー感も落窪物語のほうがたぶん強いような気がする。男君も女君も乳母子も泣いてばかりだし、継母以外はみんな良い人っぽいし。ちょっと自分的には、これで十分です、ハイ。 落窪物語の阿漕が心強い味方に見えたのは、そもそも落窪物語は田辺聖子版で読んだからかな。2023/05/16
Ohe Hiroyuki
3
日本版シンデレラと呼ばれる物語である▼とはいえ、シンデレラと思って読むと大分様相が異なる。和歌がたくさん詠まれ、趣きが出ているし、主人公(宮姫君)は貧しい暮らしをしているのではない。▼継母のあらぬ噂を広められ、顔に泥を塗られ、出家してしまおうかと思い悩んでおり、当時の状況がよくわかる。障害をもろともせずに突き進む主人公(「三位の中将」)の姿は、ある意味日本版「眠れる森の美女」である▼本書は大人気だったようで、大変多くの写本があるようだ。言葉のセンスが際立っている。「むくつけ女」という言葉は忘れられない。2025/08/15
Ayako Moroi
3
手に取りやすくよみやすい形の『住吉物語』が出版されて嬉しい。『落窪』や『とりかへばや』の人気も根強くあるので、『源氏物語』ほど重くなく、楽しく読める『住吉物語』の人気が高まってほしいと思う。現代の感覚では、皇族の血筋が絶対的なキャラクター造型には違和感があるし(「親ガチャ」どころではない出自の絶対性を痛感する)、せめて『落窪』のように中の君や三の君に誰か良き相手を見つけてあげないのかなあとは思うけれども、当時としては違和感なく読めたのだろう。平安期から連綿と続く改作はこの作品の人気の証でもある。2024/06/30