内容説明
華麗な宮廷生活を活写しながら、その生活に溶け込めない自身の複雑な心境も語る。同僚女房やライバル清少納言についての言及には対象を批判的に見る目が利いている。『源氏物語』成立の背景を知るための最適の書。
※本作品は紙版の書籍から口絵または挿絵の一部が未収録となっています。あらかじめご了承ください。
目次
1 出産まで
2 敦成親王誕生
3 豪華な祝い事
4 一条院内裏へ
5 消息体
6 年次不明の記録たち
7 寛弘七年記録部分
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
117
『源氏物語』の中にある陰翳や愁いの立ち込める雰囲気に惹きつけられていた。全文を読んだことはないのだが、一部を読んでもあの独特の感じは伝わってくる。それは多分「もののあはれ」だろう。『紫式部日記』を読むと、『源氏物語』の「もののあはれ」は、作者紫式部の生き方の反映であることがよく分かる。夫を亡くして、慣れない宮中勤めをする苦労、日記の中に出てくる彼女の苦しさ。「水鳥を水上とやそよに見むわれも浮きたる世をすぐしつつ」日記の中に出てくるこの歌の中で、水鳥にたとえて、自分の人生の苦しさを表現している。→2016/12/16
Sato19601027
79
「紫式部日記」は、こんなにも面白かったのか。古文の授業は難しくて辛い思い出しかないが、この本のように、「訳文/原文/寸評」の順に読むと、サクサク読み進めることが出来る。原文は難しいが、訳文があるため、苦労しない。また、山本先生の寸評が的確で理解が進む。女房たちを批評する消息体部分は、皮肉が効いている。特に「清少納言こそ、したり顔でいみじう侍りける人。(中略)そのあだになりぬる人の果て、いかでかはよく侍らむ。」の部分は、感動するくらい痛烈。紫式部が、自身を自己分析している箇所も読み応えがある。2024/04/03
molysk
68
夫を失ったのちに、藤原道長の娘、中宮彰子に出仕した紫式部がのこした日記。前半は、彰子の出産を中心とした日々を記す。道長らの人々に向けられた鋭い観察が目を引く一方で、宮仕えの経験の短さからか、人間関係の悩みを吐露する一幕も。後半では、随筆風の文体で率直な考えを述べる箇所がある。彰子に仕える女房に、もっと風情をもつように苦言を呈する姿は、経験を積んだ自信を感じさせる。清少納言を痛切に批判する一節は、清少納言が仕えた定子のサロンと比べて、彰子のサロンが優雅さに欠けると評されることへの反目があったのだろう。2024/08/04
佐島楓
53
紫式部、こんなに辛辣な人だったとは・・・。やはり昔から女性が集まるところにはいろいろあるのだなあ。2016/03/01
SOHSA
44
《kindle unlimited》NHK大河ドラマ「光る君へ」の関連で手にとった。紫式部の生きた時代、後宮の様子、貴族の暮らし等々が生き生きと感じられた。紫式部についてはとかく清少納言とのライバル関係が取り沙汰されることが多いが、女房として仕えた期間には10年ほどの差があり、紫式部の心情としてはそうであったとしても実際には両雄相見える状況はほぼなかっただろうことがよくわかった。千年昔の平安貴族と後宮の景色が彩りやかに眼前に蘇った。ドラマを見る時の良き助けにもなった。2024/09/26