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内容説明
「こぶとりじいさん」や「鼻の長い僧の話」など、とんでもなくて面白い鎌倉時代の説話(短編物語)集。総ルビの原文と現代語訳、わかりやすい解説とともに、やさしく楽しめる決定的入門書!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
こーた
127
むかしのひとたちの説くものがたりの、なんとぶっとんでいることか。おじいさんはこぶをつけられ、僧はきのこに生まれ変わり、助けた亀は恩返し、夢で股が裂ければ不吉の前兆、ひとにしゃべった夢は買われて出世もまた夢と消える。ありがたい教訓かとおもいきや、なんじゃそりゃ!と煙にまかれて、残るのはモヤモヤばかりである。でもなんだか面白かったなあ!という余韻のみが後を引くのは、どこか落語のようでもある。そういえば、むかしのひとはおなじ物語を何度も語ることで、その語りの巧さを競ったのだとか。そんな珠玉の「もの騙り」の数々。2017/11/29
(haro-n)
63
代表的な話のみ、現代語訳、原文、解説の順で説明しています。どんな話が載っているのかを知りたいビギナーや、単に話の筋を知りたいという人には調度よいと思いました。長い話は、所々原文が省略され、現代語訳メインになっています。これで興味を持ったら、是非全話にチャレンジしてほしいです。全話を読むことで、その本の雰囲気や狙いが見えてくることがあります。解説では色々説明してくれていますが、そこは自分でも体感したいところ。一冊読み通す中で自分で気づくのも、作品を鑑賞する楽しみだなぁと、改めて思いました。2017/11/16
ぴー
31
謎めいた序文で始まる説話集。鎌倉前期成立、作者未詳。『この世の「理不尽」や「もやもや」』をも取り込みながら、緩急のある構成で長く愛されて来たお話たち。また一つ中世が近くなった。受験勉強で触れた物語も多いせいか、どこか懐かしく嬉しい。現代語訳、原文が少しずつ繰り返される構成なので、どちらも楽しめる。コラムがまた面白い。印象深かったのは、「意外な時点から運命が回り始めていた説話」として紹介される「唐の卒塔婆に血がついた話」、「夢を買った人の話」。いつか全話通して読めたら、きっとその配置の妙も楽しめるだろう。2018/01/21
❁Lei❁
30
お下劣な話を期待して読み始めたのですが、かの有名な平中が排泄物を盗む話などは収録されておらず、全体的に上品にまとまっていました。世の理不尽を写し取り、無知や慢心を戒めるというのが『宇治拾遺物語』の特徴であるため、そうした話が中心になっています。たとえば、こぶとり爺さんの話では、うまくいった人の方法を安易に真似するなという教訓が込められており、「そこ!?」と面食らいました。勧善懲悪である現代のこぶとり爺さんとは、ひと味もふた味も違った深みがあります。思いのほかビターな味わいの一冊です。2025/11/23
テツ
30
宇治拾遺物語を通して読んだことはなくてもここに収録されているお話は大抵の日本人にとって馴染み深いだろう。昔々の世界では人間は万物の長ではなかった。霊長ではなかった。ありとあらゆる生物が共に生き、山も海も意志を持ち人間とやりとりをしていた。でもそれは昔々のお話。人間は賢くなり力をつけ光も闇も覆い隠し怪しいモノを駆逐して新しい秩序を構築していった。そしていつの間にかこの世界には人間だけが取り残されてしまった。もう人間には人間しかいなくなってしまった。こうして残されたお話だけが人間が孤独でなかった時代を伝える。2020/02/26
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