内容説明
少年のころ、夢想の霧の中でくるまっているほど楽しいことはない。そのころの夢想の対象は、東洋史にあらわれてくる変な民族についてだった……憧れだった草原の国を訪ね、悠久の歴史と現在を誌す。
目次
ハバロフスクへ(新潟から 偉大なる逆説 ほか)
イルクーツクへ(イルクーツクへ 光太夫 ほか)
ウランバートルへ(ウランバートル ノモンハンの悪夢 ほか)
ゴビへ(ゴビへ ゴビ草原 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
molysk
68
少年の日に夢想した、草原を疾走する遊牧民族の雄姿。日本とモンゴルの国交正常化の翌年、1973年に司馬はついにモンゴルへと向かう。ウランバートルを経て、ゴビ草原へ。夜、満天の星に圧倒される。昼、大地に果てはなく、人影はまばら。遊牧の民は、日本からの客人をもてなす。馬を自在に駆る姿は、かつて大陸を席巻したジンギス・カンの一族を彷彿とさせる。また、モンゴルへの途上、ソ連では連絡なしでの大幅な飛行機の遅延など散々な扱いを受けるが、社会主義国家における官僚主義の弊害を示す貴重な記録ということもできるだろう。2023/08/26
ehirano1
67
初版から40年以上経過しているので多少の変化はあるかとは思いますが、”ジンギスカン”はモンゴルの歴史においてはタブーであることには驚かされました。2016/07/02
Book & Travel
58
1973年、まだ社会主義国だったモンゴルへの旅。当時直行便はなく、ソ連のハバロフスク、イルクーツクを経てウランバートルへ。西域好きの司馬さんにとって憧れの場所で、様々な騎馬民族の興亡に思いを馳せるのも楽しそうだ。一方で戦時中のノモンハンでの経験から、旧満州・シベリアの地に複雑な思いがあるのも感じられる。旅のハイライトは南ゴビ。「億の草が薫る」草原と「星ばかりの大観」の星空に、司馬さんも須田画伯も興奮気味。人と自然への愛情と名残惜しさを感じるラストに、感動的な余韻が残る巻だった。【司馬遼太郎の二月】参加。2019/02/06
ehirano1
52
再読。当時のモンゴル人と漢民族が常に対立した原因が民族としての業種である”遊牧”と”農耕”に起因していることに納得しました。どちらの言い分(p102)にも肯けます。2016/07/10
優希
47
モンゴル語専攻だった司馬さんが初めてモンゴルを訪れたときの旅行記になります。壮大な自然とそこに住む人々が生き生きと描かれ、中国やロシアとの歴史関係も知ることができ、とても興味深かったです。2024/03/28