紀伊國屋書店 出版部 図書目録

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文 学(研究・批評)

2019年1月現在

おとぎ話が神話になるとき

46判 264頁 本体価格2,600円+税
ジャック・ザイプス 吉田純子,阿部美春訳(1999) 〈978-4-314-00835-8〉
おとぎ話を子供の手に取り戻さなくてはならない。グリム兄弟やシャルル・ペローが加えた改変や,神話を持たない若い国・アメリカでディズニー映画はおとぎ話をどう変えたのか。また「オズの魔法使い」がアメリカ現代文学について与えた影響などを検証し,現代社会に必要な「本当のストーリーテリング」を考える。昔話研究の第一人者による画期的な1冊。図版多数。

本・子ども・大人

46判 276頁 本体価格2,600円+税
ポール・アザール 矢崎源九郎,横山正矢訳(1957) 〈978-4-314-00003-1〉
大人が子どもの気持ちを理解せず,夢のない教訓だらけの本を与えてきたことを警告し,子どもの想像力を空高く飛翔させるためにどのような本を与えればよいかを,機知に富んだ軽妙洒脱な名文で具体的に説いた児童文学論。文学史の大家が古今東西の児童書を題材に,陽気な皮肉と風刺をまじえながら語った,子どもにかかわるすべての大人必読の古典的名著。

愛について――プルースト、デュラスと

46判 304頁 本体価格2,400円+税
鈴村和成(2001) 〈978-4-314-00891-4〉
なぜ作家は恋愛小説を書き続け,人は読みついでゆくのだろう?
20世紀を代表する小説家,プルーストと彼を信奉していたデュラス――恋愛が重要な主題だった二人の作品を,「逃げ去る女アルベルチーヌ」をもとに,時に『源氏物語』の「宇治十帖」を参照しながら読みなおしていく。詩人にしてフランス文学者の著者ならではの,恋愛論として読む「恋愛小説論」。

完本 焔の文学

46判 464頁 本体価格4,800円+税
モーリス・ブランショ 重信常喜,橋口守人訳(1997) 〈978-4-314-00796-2〉
不在を存在させなければならない言語の宿命,それに賭ける文学者の虚構への熱情,これらが無を有に,否定を肯定に変え,沈黙から言葉を,死から生を生む。また,そのためにこそ,肯定を否定に,言葉を沈黙に,生を死に変えなければならない。揺れうごく作家の魂を文学の〈焔〉のなかにこそ見出そうとする,フランス批評の孤峰ブランショの珠玉の評論集。

表象のアイルランド

A5判 622頁 本体価格5,700円+税
テリー・イーグルトン 鈴木聡訳(1997) 〈978-4-314-00790-0〉
ジョイス,ワイルド,バーナード・ショー――ヨーロッパの辺境,アイルランドから,なぜかくも偉大な文学者たちが輩出したのか? 文学作品を大胆に読み解きながら,アイルランドの文化的・歴史的風土の根底に刻みこまれたイギリスによる苛酷な植民地支配の記憶に迫る。文化研究,ポストコロニアル批評にすぐれた示唆を与える力作。

ビート・ジェネレーション 〈新装版〉

46判 212頁 本体価格1,900円+税
諏訪優(1980) 〈978-4-314-01081-8〉
ケルアック,ギンズバーグ...保守的な価値観を全面的に拒絶し,人間性の原点に立ち返ろうとした,ビート・ジェネレーションたち。50年代半ばのアメリカに突如「詩をたずさえて登場した」ムーブメントを,現地との交流を通して同時代的に日本に紹介しつづけた著者が,「わが国の一人の詩人のビート観」として,運動終息後の1965年に考察した,基本の書。

耳の悦楽 ラフカディオ・ハーンと女たち

46判 232頁 本体価格2,100円+税
西成彦(2004) 〈978-4-314-00965-2〉
ギリシャに生まれ,アイルランド,アメリカ,仏領マルチニーク,日本と渡り歩き,フォークロア収集にのめり込んだ文化横断者ラフカディオ・ハーン。異文化を貪欲に吸収するその創作活動の命綱は,民間伝承の語り部としての女たちだった。ハーンを介さないと聞こえてこない声に耳をすませながら,ハーン研究の新しい地平を切りひらく渾身の論集。

クレオール事始

46判 192頁 本体価格1,800円+税
西成彦(1999) 〈978-4-314-00853-2〉
カリブ海の島マルチニークは,カリビアン・ポップスやクレオール文学の故郷として知られている。しかし,どれほどの人が,クレオールのことばを自分の舌の上で転がしてみたことがあっただろうか。――百年前にこの島を訪れた作家,ラフカディオ・ハーンの足跡をたどりつつ,民衆に語り継がれてきた物語や歌の生き生きとした魅力を紹介する。

文学的商品学

46判 256頁 本体価格1,600円+税
斎藤美奈子(2004) 〈978-4-314-00958-4〉
商品情報を読むように,小説を読んでみよう。文学の面白さはストーリーや登場人物の魅力だけではない。作品に登場するモノやその描写を見ていくと,思いもかけなかった読み方ができることに気づくだろう。ファッション,風俗,ホテル,バンド,食べ物,そして「貧乏」。9つのテーマをめぐって,村上春樹から渡辺淳一まで読みくらべる,痛快無比の文芸評論。

〈悪女〉論

46判 232頁 本体価格1,748円+税
田中貴子(1992) 〈978-4-314-00578-4〉
人はなぜ〈悪女〉をつくりたがるのか? 〈悪女〉というのに,悪男とはなぜ言われないのか?
新進気鋭の国文学者である著者は,中世における悪女伝説を取り上げ,悪女が作りあげられていく過程をたどってゆく。そこには,男たちの権力的な眼差しが見え隠れしている。悪女について類型的イメージを抱く現代日本人への果敢な挑戦状!

日本ファザコン文学史

小B6判 240頁 本体価格1,600円+税
田中貴子(1998) 〈978-4-314-00822-8〉
あまりにも自然なために,日本では見逃されてきた父娘関係を「源氏物語」や「無名草子」「とはずがたり」など女性が書いた古典文学から読み解く。天皇と皇女の危うい関係から女が女を躾る「女訓書」の世界まで,精密な読解と大胆な切り口で考察する。現代に通じる,家父長制や婚姻制度が整った中世,父の力はどのように娘たちを支配していたのか。画期的な文学史論。

本の旅

小B6判 252頁 本体価格1,748円+税
大河内昭爾(1996) 〈978-4-314-00745-0〉
文芸評論家として,数多くの新人を発掘し,また作家からの信頼も篤い著者が,思い出の本について語る。「昔の本には,いうにいわれぬ匂いがあった。単なるカビの匂いかもしれないが,なつかしい匂いである。その匂いを求めて,本の思い出をたどってみたい」。近代文学を中心とする名作を数多くとりあげ,文学案内としても,格好の一冊。

大衆文学

46判 204頁 本体価格1,800円+税
尾崎秀樹(2007) 〈978-4-314-01030-6〉
大衆文学は1920年に成立したといわれるが,著者は遡って江戸時代の講談,落語などの大衆文化の中にまで踏みこみ,「大衆とは何か」「大衆の望む面白さとは何か」の問いを軸に,日本人の精神構造にふれる何かをつかもうとする。理論は不要とみなされてきた大衆文学の領域に初めて分析の筆を入れ,日本の文学的伝統の中に正当に位置づけた力作。1964年初版を復刊。

上田秋成

46判 232頁 本体価格1,748円+税
〈精選復刻 紀伊國屋新書〉
森田喜郎(1994) 〈978-4-314-00639-2〉
西鶴,近松とならぶ近世文学の巨匠,上田秋成の小説の世界を,『春雨物語』の再評価を軸にして独自の視点から,秋成の文学観と人間観を浮彫りにする,気鋭の野心作。巻末に秋成の詳しい年譜も収録。

〈内容〉上田秋成の生涯/秋成の浮世草子/雨月物語/春雨物語/上田秋成年譜/秋成をより深く研究する人のために

釋 迢空

46判 240頁 本体価格1,748円+税
〈精選復刻 紀伊國屋新書〉
岩田正(1994) 〈978-4-314-00641-5〉
国文学者・民俗学者として著名な釋迢空・折口信夫の生涯を,歌人としての業績を中心にとらえ,その作品の本質と特異な人間像に鋭く迫る力作。

〈内容〉『海やまのあひだ』に包含するもの/ますらおぶりへの希求/『春のことぶれ』の叙情について/短歌滅亡の論/『水の上』を中心として/挽歌/『死者の書』をめぐって 他

竹久夢二 夢と郷愁の詩人

46判 200頁 本体価格1,748円+税
〈精選復刻 紀伊國屋新書〉
秋山清(1994) 〈978-4-314-00636-1〉
独特の女絵と宵待草のうたで一世を風靡した大正の画家・詩人竹久夢二。その人気は根強くつづき,今日また"夢二リバイバル"といわれ,一向に衰えることがない。あの耽美な詩と絵が何故こうもわれわれの郷愁をさそい,心をなごませるのか。著者はこの秘密を,単なる懐古趣味とみることなく,彼の生きた大正という時代の現実の中にさぐろうとする。秀逸の夢二論。

中原中也の世界

46判 216頁 本体価格1,748円+税
〈精選復刻 紀伊國屋新書〉
北川透(1994) 〈978-4-314-00635-4〉
昭和初年代の,奇妙に無秩序な青春像の中で,中原中也は,秩序への違和とそこからくる挫折を,鋭敏な言語感覚で自由奔放にうたいあげた。本書は,著者自らの中也体験から,中也の抒情の真摯な表情とその不幸な耀き,更に,風土と近代との裂け目で苦しい告白を強いられたその詩の根拠を,詩の言語を通して,見事に浮彫りにする。