出版社内容情報
人はなぜ〈悪女〉をつくりたがるのか? 〈悪女〉というのに,悪男とはなぜ言われないのか?
新進気鋭の国文学者である著者は,中世における悪女伝説を取り上げ,悪女が作りあげられていく過程をたどってゆく。そこには,男たちの権力的な眼差しが見え隠れしている。悪女について類型的イメージを抱く現代日本人への果敢な挑戦状!
内容説明
新進気鋭の国文学者田中貴子は、その生成のメカニズムを解き明かすことで〈悪女〉のイメージを解体し、〈悪女〉という負のレッテルの下に閉じ込められてきた女たちのまことの姿を浮き上がらせようとする。本書は、〈悪女〉についての類型的イメージを抱く多くの現代日本人への果敢な挑戦状でもあるのだ。
目次
1 帝という名の〈悪女〉―称徳天皇と道鏡
2 鬼にとりつかれた〈悪女〉―染殿后と位争い
3 竜蛇となった〈悪女〉―『道成寺縁起絵巻』から『華厳縁起絵巻』へ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
281
後に書かれる『日本聖女論序説』と対になる論考。著者の初期のもの。弱冠32歳の時の労作である。すごいなあ、とただただ驚嘆。なによりも文献の博捜力が凄まじいばかり。『無動寺建立大師伝』や『善家秘記』なんて、これまでに開いたことはおろか耳にしたこともない。日本古典(とりわけ中世の文献)に関しては、かの澁澤龍彦をも上回るのではないだろうか。さて、本書では称徳天皇、染殿后、竜蛇に変身した女(一般には清姫として知られる)の3人を取り上げている。分析の緻密さもさることながら、何よりも圧倒的なまでの知識量⇒2024/06/19
eirianda
4
思っていた悪女の本ではなかった。フェミニスト視点の男から<悪女>と呼ばれる女の姿で、悪い女の話じゃなかった。女から見ても悪い女っているんだけどなー。まあ、女って包み込む暖かさと飲み込む恐ろしさを持ち合わせていると思っているので、その恐ろしさに縮み上がってしまった男たちがこんな風に物語るのは分からないでもない。それを蔑視せずに崇めてくれれば……私たちだって、グスン。最近、セクハラヤジで話題になった東京都議も、その辺にいる二世代前型思考の人々も、無意識では女性に超怯えていたりマザコンだったりするんじゃないの?2014/06/25
yurari
2
悪女とは男性側の価値基準による女の尺度。そしてそこには性的な意味合いが含まれる。異種婚系の話は女性側が異種であるケースが多い…確かになぁ。2022/09/24
NyanNyanShinji
2
この本では3人の<悪女>について書かれています。1人は称徳天皇(孝謙天皇)、次に清和天皇の母后の染殿皇后、最後に道成寺の清姫。著者はあくまで悪女とい言葉を使う際にはあくまでも括弧書きの<悪女>としているが、この言葉は長い時を経て彼女達に当てはめられたもの。本書は著者のホームグランドの中世文学に登場する彼女たちを、史実と切り離して如何に悪女とされていったのかの過程と背景を腑分けしてゆくスリリングな書であった。あと悪女という言葉の使われ始めた時の定義として「見目の悪い女性」だったとは衝撃だった。2022/02/19
NyanNyanShinji
1
この本では3人の<悪女>について書かれています。1人は称徳天皇(孝謙天皇)、次に清和天皇の母后の染殿皇后、最後に道成寺の清姫。著者はあくまで悪女とい言葉を使う際にはあくまでも括弧書きの<悪女>としているが、この言葉は長い時を経て彼女達に当てはめられたもの。本書は著者のホームグランドの中世文学に登場する彼女たちを、史実と切り離して如何に悪女とされていったのかの過程と背景を腑分けしてゆくスリリングな書であった。あと悪女という言葉の使われ始めた時の定義として「見目の悪い女性」だったとは衝撃だった。2022/02/19
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