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内容説明
平安の『源氏物語』から明治の近代化を経て『夜明け前』に至るまで、日本文学はどのような伝統を引き継ぎ、いかに近代化してきたか。「源氏」という構想の妙を紐解き、古典と近代を繋ぐ、新しい日本文芸史。
「源氏」と「漱石」をつないでみたいと思ってきた。「もののあはれ」と「可哀想だた惚れたってことよ」である。途中には右京大夫、西行、後鳥羽院、連歌、芭蕉、西鶴、井月たちがいて、主人公をあからさまにしないスタイルを試みてきた。しかし「漱石」以降、近代文学は主人公を用意して、その「創(きず)」を描くことにした。何かの「夜明け前」だったのか。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かふ
17
日本文学案内(ナビゲーター)としての本。『源氏物語』についてはかなり詳しく3回にわけて、五十四帖すべてを解説してくれているので、これから読む人にも便利なナビゲーターとして役立つと思う。ただ『源氏物語』にパワハラはないとか西行が桜を日本に広めたとか間違ったことを断言するのでそのへんは注意する必要があると思う。『源氏物語』を漱石に繋げる読みは「追伸」として書かれたあとがきで示されるだけで、本文はそれぞれの文学案内としての内容である。日本文学の彼岸性、此岸という現実世界と彼岸という幻影世界の二面性。2023/07/06
なおこっか
4
源氏と漱石をつないでみたい、との正剛先生のまえがきを読んだ時は???っとなったけれど、通読すると西行や芭蕉や西鶴や井月を経て、日本文学の地下水脈がきちんとつながっていた。源氏は珍しく三夜にわたって解説されているが、その概要自体は源氏読みにとっては既知であったりする。しかし重要なのはその先で、源氏は源泉なのである。それぞれの時代時代の作者としては既読の作品も、この流れにのまれて読んでみたくなるし、今回提示された水脈以外も探してみたくなる。正剛先生が“逸品”と言う幸田露伴も読まねばなるまい。2023/12/28