内容説明
いまだ出現しないものをすでに見てしまっていなければならないというのが、私が文学に無理強いに負わせている凝視力であるが、ここに収めた文章のなかでそのような架空凝視の機能について充分言い足りているとは思われない。そのような主題が一本の芯となって連なっていない感じがしても、架空凝視の機能の展開は小説の方に譲って、ここではただ幾つかの文章のそこかしこにその文学的志向が隠見しているだけでよしとしなければならない。私のこれまで書いたエッセイ、評論、回想、随想などのすべてをここに集める……。(評論集「あとがき」より)
目次
Ⅰ
二つの大患
戦争中のこと――平野謙の追想
敗戦前の数箇月
平野謙の住民運動
破滅もせず、調和もせず
荒正人を悼む
「終末の日」
荒宇宙人の生誕
「近代文学」と「近代化」――荒正人の回想
荒正人の糖尿病
「使者」と「近代文学」――福永武彦への追悼
死の連帯感
《冬の王》の氷柱の傍らで
二つの検査
三つの追悼集
同時代
探偵サムソン
花田清輝の辯証法
平田さんの想い出
追悼 対馬忠行
谷丹三のこと
阿波根宏夫のこと
Ⅱ
「近代文学」と戦後文学の自前性
『「近代文学」創刊のころ』のこと
評論家と小説家
第一の書、『不合理ゆえに吾信ず』
「難解」な文章
準詩集
ドストエフスキイヘの感謝と困惑
残された霊妙な世界
歴史の断面
古い記憶
戦争中の中野時代
戦後の欠落部
Ⅲ
中野重治とのすれちがい
大岡昇平
マラソンのゴール到達――大西巨人
不安の原質――島尾敏雄
吉本隆明における戦後
井上光晴と文学伝習所
核時代の文学の力――大江健三郎について
「妄想」について――高橋和巳
五木寛之
苦渋の探求性――渋沢孝輔
「夜の会」のこと補足
「夜の会」の頃の岡本太郎
深い鎮魂の書――野原一夫『回想 太宰治』
Ⅳ
記憶
生の二重性
逆光のなかの白内障
脳の断面図
着ぶくれしたサンタクロース
熱帯性ものぐさ症
自己療法
カメラマン
胎内瞑想について
私の憩う場所
「ますだ」の一夜
ヴェネツィアの花嫁
キャラーフとかぶと
-
- 電子書籍
- 弟キャッチャー俺ピッチャーで!(6)