内容説明
いまだ出現しないものをすでに見てしまっていなければならないというのが、私が文学に無理強いに負わせている凝視力であるが、ここに収めた文章のなかでそのような架空凝視の機能について充分言い足りているとは思われない。そのような主題が一本の芯となって連なっていない感じがしても、架空凝視の機能の展開は小説の方に譲って、ここではただ幾つかの文章のそこかしこにその文学的志向が隠見しているだけでよしとしなければならない。私のこれまで書いたエッセイ、評論、回想、随想などのすべてをここに集める……。(評論集「あとがき」より)
目次
序詞 軍隊と文学的出発点――武田泰淳に聞く
Ⅰ
弔辞 武田百合子
武田百合子さんのこと
鬼ごつこをして隠れている百合子さん
胡姫――武田泰淳書
二度目のステッキ
吉祥寺今昔
筑摩書房の一冊――「武田泰淳全集」
私の新古典――武田泰淳『富士』
戦後文学「殺す者」「殺される者」ベスト・テン
Ⅱ
弔辞 佐々木基一
無際限飛行の同行者たちへ
佐々木基一の昇華
二人の未完作家
弔辞 藤枝静男
剛直な自己乗り越え性――小川国夫『藤枝静男と私』
突出したアヴァンギャルド作家――追悼・安部公房
存在感覚の変換
アベコベの逆縁
安部公房の発明空間
同時代者の不屈性――大岡昇平頌
Ⅲ
泥と蓮
全集の縁に
内部批判者山室静
山室静の不屈性
藤原定をおくる
オルフェの道
『不連続殺人事件』誕生のころ
「虚体」と「神」
椎名麟三『赤い孤独者』
椎名麟三『美しい女』
トルキスタン旅行
アンケートへの答え
文学史に残る戦後作品は何か?/誰のために小説を書くか?/わが文学の泉
Ⅳ
机龍之助
汎・エロティシズム
遠い青春の書――「新興文学全集」
吉田一穂について――詩壇のそとから
違和感なく融合
宇宙で見るべき夢の絵
「未知」啓示する写真集
写し手と写され手
顔をつくる
Ⅴ
生と死との境
病歴
「死」を想う「死」を語る
しごとの周辺
睡り/夢/水/水彗星/食物連鎖/心電図の映像/電気ショック
心臓の電気ショック療法
老害(続)
自同律の不快
大クレーター
行きつくところは全滅亡