内容説明
いまだ出現しないものをすでに見てしまっていなければならないというのが、私が文学に無理強いに負わせている凝視力であるが、ここに収めた文章のなかでそのような架空凝視の機能について充分言い足りているとは思われない。そのような主題が一本の芯となって連なっていない感じがしても、架空凝視の機能の展開は小説の方に譲って、ここではただ幾つかの文章のそこかしこにその文学的志向が隠見しているだけでよしとしなければならない。私のこれまで書いたエッセイ、評論、回想、随想などのすべてをここに集める……。(評論集「あとがき」より)
目次
Ⅰ
裂け目の発見 文学的小伝
『資本論』と私
伊東三郎の想い出「農民闘争」時代のこと
古い文章『農民委員会の組織について』
或る時代の背景
「農民闘争」とその後
Ⅱ 影絵の世界
魂の同質性
ロシア的雰囲気
オブローモフとペチョーリンとムィシュキンと〈主義者〉
ニヒリズムの容器
反抗の〈夜〉と〈昼〉 アナキズムとコンミュニズム
〈政治への没入〉の時代
灰色の壁 1
灰色の壁 2
さかさまになつた夜と昼 無職業の時代
戦争のなかの顔
検挙と数冊の本