内容説明
いまだ出現しないものをすでに見てしまっていなければならないというのが、私が文学に無理強いに負わせている凝視力であるが、ここに収めた文章のなかでそのような架空凝視の機能について充分言い足りているとは思われない。そのような主題が一本の芯となって連なっていない感じがしても、架空凝視の機能の展開は小説の方に譲って、ここではただ幾つかの文章のそこかしこにその文学的志向が隠見しているだけでよしとしなければならない。私のこれまで書いたエッセイ、評論、回想、随想などのすべてをここに集める……。(評論集「あとがき」より)
目次
Ⅰ
最後の二週間
初期の頃
「お花見会」と「忘年会」
武田泰淳と百合子夫人――『目まいのする散歩』野間賞受賞式における挨拶
最後の四個月
竹内好の追想
落日の夢
村上一郎君追悼
塚原堯さんの想い出
松井勲君の想い出
持田美根子さん追悼
Ⅱ
精神のリレーについて
目に見えぬものを伴侶として――高橋和巳と私
抽象的なものの現実性
表現者とは何か
探偵小説の新領域
探偵小説の運命
『死霊』の掲載について
江藤淳のこと
Ⅲ
平野謙の円熟
純粋日本人、藤枝静男
二人のドン・キホーテ
中村真一郎について
長谷川四郎の四季
井上光晴の「最高!」
百の顔と百の心
小川国夫の人徳と文徳
闇のなかの一本の蝋燭
Ⅳ
台湾遊記
――草山
最低選手権者
没落の家系
「構想」と「構想社」
新日本「文学」へ呈する苦言
館の想い出
巨大な鉱床
二十五周年記念に
心電図、やや良
書かでもの記