内容説明
ローカルラジオ放送局「鎌倉なみおとFM」の最終番組は22時で終了する。しかし、なぜか時々、23時から番組が流れる夜があり、それは1985年を生きるDJによるもので……。
親友の婚約を素直に祝うことができない女性・三回転半ジャンプさん、母親の再婚相手と距離を置いてしまう小学生・ラジコンカー君……悩めるリスナーが、時を駆ける真夜中のラジオと繋がる時、優しい波音がきこえてくる――。
聴き終えた後、心の声に耳を傾けたくなる不思議なラジオ。
『東京すみっこごはん』『今日は心のおそうじ日和』の著者・成田名璃子、新境地!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんごろ
202
音源を入れてないのに1985年のFMラジオが時を超え、令和の一人のリスナーだけに届く。文明の利器の違い、言葉の違いに、DJトッシーが途惑うのは当たり前だよね。スマホは当然ないし、言葉ではエモいとか確かに1980年代にはなかった言葉だよ。トッシーよ、ナウいとか言ってギャフンとしてやれと思ってしまった昭和のおっさんの俺(笑)。ただ、昭和、平成、令和だろうが、変わらぬものはある。それは人の気持ち。時代が変わっても、悩みや葛藤、人を想う気持ちは変わらない。そう思わせる物語。掘り出し物の面白さでした。2023/04/27
おしゃべりメガネ
141
お気に入り読友さん達が何気に絶賛していた作品で、しかも成田さんとなれば失敗はしないだろうと手にとりましたが、しっかりと期待を裏切らないステキな一冊でした。時は1985年とここ最近を結ぶタイムリープものになるかと思いますが、1985年をしっかりリアルタイムで経験している自分的にはハマりましたね。ラジオのDJ「トッシー」が何気に冗談のようにつぶやきはじめたトークが限られたリスナーのもとへ。しかも選ばれしリスナーは時代を跨ぎ、それぞれにワケありな悩みを抱えています。ほっこりしながらドキドキもできる作品でした。2023/05/05
昼寝ねこ
122
1985年の世界と現代がラジオのパーソナリティを通して繋がってしまうというお話。少し前にも1985年あたりを扱った小説を読んだが、この時代はそんなに小説にしやすい年代なのだろうか?舞台が鎌倉なので土地勘があり興味を持った。1985年のパーソナリティが時を越えて繋がった人たちの悩みを聴いていくが、当人たちにとっては深刻な問題でも文体のせいか軽く感じられた。最終章の結末も都合が良すぎ。SFというよりファンタジーに近い。この時代が大好きで湘南の雰囲気も味わいたい方は一読してもいいかも。私にはイマイチだった。2025/01/14
シナモン
120
バブル時代のローカルラジオが繋がる先ははるか未来の令和の時代。リスナーはたった一人、苦しい何かを抱えていて、切羽詰まって、でも同時代の親しい人には助けを求められない、そんな人。なんと面白い設定。ショルダーフォンからスマホへ…。時代は進化しても人間の本質は変わらない。時空を超えて絡み合う人間模様、とても楽しめました。 2023/09/14
mariya926
117
ラジオスイッチを入れずに生放送を始めたDJトッシー。なんと未来に通じてしまう物語。未来で色々と悩んでいる人と話す内に、少しずつ扉が開かれていきます。好きなタイプの物語ですが、ちょっと物足りない感じがしました。なんでだろう?2023/05/28