内容説明
『飛』の旗を掲げた岳飛のもとに、かつての仲間、孟遷や于才も加わり、さらに梁山泊からの援助を受けつつ、本格的に岳家軍が再興されていく。金国と講和した南宋は、韓世忠率いる水軍が、次の相手を梁山泊水軍と見据え準備を始めていた。南方では南宋軍が阮廉の村を襲い、岳家軍と衝突し惨敗したが、景〓(ろう)に寨を築く。ついに小梁山の秦容も守りを固めるため調練を開始する。深慮遠謀の第八巻。
目次
徐寒の火
呉買の火
天捷の光
地劣の夢
鳳茫の宙
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
245
様々なパートが細切れで少しずつ進行する、若干スローペースではあるが、人と人の再会や別れが多く描かれ、心が温まる、退屈を感じさせない巻。耶律大石が最期を迎え、顧大嫂が西の執政に。よくよく考えると、豊臣秀吉級のとてつもない立身出世人生。ここに韓成が絡んで、西の方でも一盛り上がりあるのだろうか。分量としては南方の岳飛/秦容の軍編成着手の経緯が最も多く、ここでも、岳飛とその家族、梁興との再会、そして遂にの秦容/岳飛の対面と、決して劇的にはならず、静かに熱い交流として、先への期待を高める。2022/03/04
しんごろ
158
岳飛、秦容の開墾が主だったのが、今作から様子が一変。南宋と梁山泊水軍が手探りながらぶつかった。岳飛も秦容も開墾しつつも、軍の整備に入り、いよいよ激闘の予感を感じさせる。一方で西遼の巨星が…。今作あたりから、梁山泊から岳飛がメインになってきたか。まさに“水滸伝”から”“岳飛伝”という様相に。それでも史進と蘇端のやりとりにクスリと笑い、宣凱のぼそっとした惚気に、“水滸伝”の要素が残ってて、やはり、これは“北方水滸伝”なんだと、ホッとしている自分がいる。次作は激闘の予感を感じさせましたね。2019/12/01
sin
56
「こわい、こわい3年も後回しにしていた。」さて、詰まるところ人を動かすのは思想ではなく感情であると思うのだが話が進むにつれ登場人物は行動に意義を模索する漢に転身してしまう。思索する豪傑たちに卑劣漢はいない、汚れ仕事や私欲さえなんとなく綺麗事に糊塗されてしまうようで釈然としない。岳飛は中華は一つでないと漢民族同士の殺し合いになると歴史を振り返って考察するが、降りかかる火の粉を払うのではなく戦を無くす戦であるのか?その彼が戦に向かうときに蘇生していくのは彼だけでなく物語もそうであると感じた。2022/11/23
眠る山猫屋
55
七巻・八巻とあとがきが良い!そうか史実は随分違うんだな・・・。岳飛と秦容がとうとう邂逅したけれど前途多難な雲行き。ずいぶん南の果てでの戦になる様相。そして往年の梁山泊・子午山メンバーがチラチラと活躍(したりしなかったり)。韓世忠の人間臭さは嫌いになれないが、年齢を重ねても変われない所が彼の限界なのだろうか。時を過たねば梁山泊の一員になっていた人物なのにね。2019/12/02
future4227
49
この巻でいよいよ開戦か、と期待していたのだが、始まりそうでなかなか始まらない。かなり焦らされている感じ。読者の気持ちを察したかのように海上では南宋水軍の韓世忠が痺れを切らして梁山泊水軍に攻撃を仕掛ける。さあ、いよいよかな。巻末の解説によると南宋宰相の秦檜は、今に至っても像に唾を吐きかけられたり、蹴られたりと散々な目にあってるらしく、少し気の毒に思う。歴史上の人物に怒りをぶつけるとか、ちょっと日本人の発想にはないかな。2020/08/04