内容説明
明智小五郎の行く手に立ちふさがる戦前最後の強敵たち。姿なき「暗黒星」、「大金塊」を狙うもう一人の黒蜥蜴ともいうべき絶世の美女、そして悪念に満ちた恐るべき「地獄の道化師」。エログロを禁止された乱歩が、初心に還った本格推理と、娯楽長編を融合させて新境地に挑むファン必見の一巻。【この電子版は、註釈と「私と乱歩」を割愛しています】
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
橘
24
面白かったです。「暗黒星」だけ既読でした。「地獄の道化師」、犯人の正体にも、動機にも驚きました。「死んだ人間でも塗りこめてあるんぢやないか?」…びっくり。「幽鬼の塔」は明智ものではありませんでしたが、人間の業を感じました。「大金塊」は小林少年がいいですね。でもどのお話も、ショッキングさが、乱歩にしては少ないな…と思っていたら、そんな社会状況だったのですね。戦争はこんなところにも影を落とすのだなぁと、解説を読んで思いました。2016/02/03
KAZOO
21
個々しばらくはこの全集も探偵物という感じがします。明智小五郎がよく出てきます。やはり少年ものとナルとあまり刺激的な話も少しオブラートに包んだ感じになってきます。パノラマ島奇談のようなものをもう少し読みたいですね。2014/07/14
道楽モン
20
時局は開戦直前。昭和14年暮からスタートした連載小説3篇+少年モノ。『芋虫』を皮切りに、彼の著作は当局の圧力によって次々と発禁同然となり、印税収入を失う。本巻収録の戦前最期の連載群も、乱歩の持ち味であった表現は抑えられ、作品の後半部(連載後期にあたる)に突如として路線変更を余儀なくされていることが生々しい。ああ、戦争直前では江戸川乱歩といえど、ここまで露骨に時局におもねらなければならないのかと、世論に抗うことの困難さがあからさまに記録されている。少年モノ『大金塊』の初読は51年前だが、暗号覚えてるなぁ。2023/06/23
不見木 叫
15
パズラー要素の強い4編と少年探偵団もの1編。「地獄の道化師」が私的ベストです。2023/07/14
頭無
8
「暗黒星」変装が嫌いと言いつつ変装しまくる明智。実写だとなぜか犯人は女性が多い。『犯人はこの中にいる』有り。「地獄の道化師」計画の発端は偶然&偶然。動機はシンプル、でも犯人は意外。毒薬はどこで手に入れたんだ?。「幽鬼の塔」探偵は河津三郎。進藤礼子の扱いが中途半端。作品も中途半端。出だしが良かっただけに残念。「大金塊」タイトル通り大金塊を探すワクワクドキドキな夢冒険。でも金塊の行く末で現実世界へ。最後の最後に乱歩の工夫(意地or皮肉)有り2021/11/01