内容説明
大乱歩の数ある長編のなかでも最高傑作と呼ばれる「孤島の鬼」。スリルとサスペンスの饗宴。前半は本格推理、中盤は怪奇小説ふう、終盤は冒険小説と万華鏡のように彩りを変え、読者を魅了することまちがいなし。珠玉のような短編で注目を浴びた乱歩が新たに長編作家に脱皮するきっかけとなった記念碑的作品。【この電子版は、註釈と「私と乱歩」を割愛しています】
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
文庫フリーク@灯れ松明の火
74
『この名作を読み落として悔いを後世に残すなかれ』(当時の広告・口絵写真より)貪るが如くのめり込み、改めて乱歩の凄さ知りました。グロテスクにして耽美。倒錯した愛ながらエンターテイメント。ミステリーで有りつつ冒険譚。口絵写真の初版本はおよそ80年前の昭和5年。参ったね、どうも。暗号文『神と仏がおうたなら 巽の鬼をうちやぶり 弥陀の利益をさぐるべし 六道の辻に迷うなよ』探偵役は主人公友人・哀しき美形の諸戸道雄。鬼才乱歩、色々な作家さんに影響与えたのだろうな。浮かんだのは皆川博子さん『死の泉』『薔薇密室』2011/04/26
文庫フリーク@灯れ松明の火
54
光文社文庫乱歩全集『孤島の鬼』同時収録『猟奇の果』感想です。子供の頃名探偵・明智小五郎に胸踊らせた身ですが、自作解説で乱歩自身が述べる通り前編後編が全く別のテイスト、珍妙な味わい。なまじ前編が猟奇的で好みだったゆえ、明智小五郎登場が却って哀しい。前編に明智未登場のもうひとつの結末繋げた方がまだマシですが『孤島の鬼』には遠く及ばず。新保博久氏の、なぜ珍妙な作品となったか解説に納得はすれど嗚呼もったいない。BLがペデラスト、受けがウルニング。語彙の増加が収穫。なれど実生活では口にさえできぬ不毛な収穫。2011/04/29
ニンジン
24
表題作の孤島の鬼は最高傑作と言われるだけあって面白かった。全く異なる事件が繋がっていき恐ろしい陰謀が明らかになる構成は面白かったのですが、諸戸の結末が時代のせいなのかもしれないがあまりにも可哀想だと言う気持ちが勝ってしまいました 確かに猟奇の果は、同じように話の二転三転があるにも関わらず失敗と言われるのも分かるが読ませてしまうのはさすがなのだと思う。 2024/03/15
みや
24
長篇『孤島の鬼』及び『猟奇の果』収録。前者は乱歩長篇の最高傑作の一つともいわれる怪奇譚。異形、不具者、人体改造などを要素として、人間の奥底に潜む猟奇性や残酷さを抉るように描く快作。悪趣味極まる乱歩の着想と筆の運びに凄みを感じる。後者はワケあって無理やり長編にした作品とのことで、自他ともに認める失敗作とされるが、各パーツは十分楽しめる。物語の混乱ぶりや支離滅裂さも面白い。この分厚い全集がブコフで100円とは儲けもの。2021/11/03
歩月るな
24
『猟奇の果』は、これだけ読むと然りだが、昨今の色々な作品の種を惹起させる勢いがある。単純に筆力が恐ろしい。詰まらなかろうが失敗だろうが、大したものには違いない。『孤島の鬼』が最高傑作なのが衆目の一致するところ、らしいが、見ての通り全集の4冊目である。つまりこれより上はこれ以降無いのか、という事になってくるが、「そんな事ぁ無いだろう」と思いたいからこそ、この先も読んでみようと言う気になると言うものなのである。(編年では序盤で主要作が出尽くしてしまう、と言うのは講談社版全集の時から言われていた模様、いやはや)2018/05/26