内容説明
高輪・如来寺に赴任した快鴬は、門前町人たちに地代を課そうとしたが、彼らがいっこうに払わないので公儀に訴えた。ごく簡単な訴訟だったはずなのに、背後に拝領地の売買という、奉行所が裁決を避けてきた容易ならぬ問題が。訴訟を取り下げさせるという厄介事が紋蔵に降りかかる表題作。「物書同心居眠り紋蔵シリーズ」第10弾。(講談社文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
baba
33
村上さんの挿画に魅かれて再読。やはり紋蔵さんは良いな。上役に無理難題を押し付けられ、したたかな人々に振り回されてもいつも己の務めを果たす、それを見て育つ文吉も勘ちゃんが可愛い。2017/02/06
マッピー
14
文吉がますますいい男になってきている。遅れている勉強を取り戻すため勉学に励んでいるけれど、それが机上の空論を振りかざすのではなく、生活に密着したまっとうな感覚を持った理屈。紋蔵のいい跡取りになるのはないだろうか。初恋の千代も江戸に帰ってきたことだしね。先が楽しみな少年である。 2019/02/14
RED FOX
13
「初代駐日アメリカ総領事タウンゼンド・ハリスは、はじめて出府した時、下田から陸路を」相変わらずビターでユーモラスでシニカルで大人な名作。善人に忍び寄る悪意を紋蔵はどう暴くか。2024/09/18
cape
12
捕物帖シリーズを読み続けているのはこの佐藤雅美だけ。そして、それで良かったと思わされる、いつも通りの楽しみがあふれていた。さりげなく天下泰平江戸の街を歩きつつ、時代考証を学ばされつつ、軽妙でほのぼのした文体、しょうもないやつだなという人々、解決することがすべてではない物語。解説者は言う。「佐藤雅美が人間と世界に対して抱いている愛着があふれている。」全く関係ないんだが、なんだか自分も肯定され、この世界に受け入れられている気分になる。しょうもないやつだな、でもそれでいいんだなと。2021/01/16
sken
12
不思議なテンポで進む時代小説です。主人公は今で言うナルコレプシーのために同心の第一線を退いてその豊富な知識と発想で事件を解決……するはずだと思ったのですが、今ではすでにナルコレプシーはほっとんど出てこないし、豊富な法や訴訟の知識はあるものの、直接行動して解決するというよりは、何となく物事が転がって解決っぽい方向に向かっているのかなぁ、ってな雰囲気です。でもそれでじれったかったり面白くないのかといえば、むしろ抜群に面白く、ついつい読み進んでしまうことになっちまいます。独特な世界で楽しめます。2013/03/28
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