内容説明
法の主体とは誰か――望むと望まざるとにかかわらず,われわれの精神と身体は法に貫かれ,法はつねにわれわれの生死に,存在そのものにかかわる経験としてある.法の起源,法と暴力,倫理との関係はいかなるものか.ベンヤミン,デリダ,アガンベンなどの思考を通して,法を生きるわれわれの正義のありかを考える.
目次
目 次
はじめに
Ⅰ 法はいかにあるか,法は何をしているか──法・暴力・神話──
1 法とその「根拠」──ハート,ルーマン,デリダ──
2 法と暴力──ベンヤミンは今日──
Ⅱ 法と倫理のあいだ
第 1 章 「市民的不服従」の思考
1 原‐形象としてのアンティゴネー
2 象徴への抵抗,有事への抵抗──「国民」か「市民」か──
第 2 章 歓待の掟──他性・言語・公共空間
1 他性と応答
2 難民の問い,世界市民の問い
第 3 章 死刑を問う
1 死刑廃止論の系譜──ベッカリーア,サド,ユゴー,カミュ──
2 主権の問い,赦しの問い──カントからデリダへ──
Ⅲ 基本文献案内
あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaizen@名古屋de朝活読書会
36
#守中高明 #感想歌 法はそう王を縛るためのもの民を縛るものにはあらず 生活は明文法では犯されぬ人の暮らしを保つためだし 法言語まだ貧弱で証明系掛けて整合具合を評価2017/03/27
またの名
4
法学の話がほぼゼロなのに法の本。デリディアンによる文学的思想的な考察は、神話的暴力による疑似起源から生み出された実体のない法システムに対抗し得る神的暴力、アンティゴネーの倫理、市民的不服従、顔と歓待、赦しについての思弁と現実の具体的個別事例(国旗国歌、クルド人難民、死刑を喜んで受け入れた付属小学校殺傷事件の死刑囚…)を交わらせる。左翼のクリシェをハイカルな理論で洗練させる高品質の議論がこうして展開されていく一方で、現実政治が怒涛のナルシシズム的退行を巻き起こして騒がしい時の落差をどう考えれば良いのだろう。2014/07/01
白義
3
スタンダードな法学の解説を期待すると失望するだろう。デリダなどを援用した批判法学の導入書だ。法自体の輪郭を描くためルーマンとハートにも言及してるのは驚いた。アンティゴネー解釈は実にお見事。私もアンティゴネーはギリシャ神話でも好きであり、あの物語の尊さ、神々しさをよく論じている。シリーズの中では解説的部分が少ない気がするが、内容は本物2010/12/28
瀬希瑞 世季子
1
アンディゴネーの解釈が良い。死刑の章は勉強になった。ヒューマニズムに包摂される死刑。死を経由することによって生以上の、生とは別の価値を持つ一つの生に至るという西洋哲学の伝統と死刑の親和性。2022/12/21
NO MORE MR.NICE GUY
0
ちょっと変わった法入門。出てくる人がまずハート、ルーマン、デリダ。それからベンヤミン。他にもサドとか。紹介されてる本も面白くて、シェレール、フーリエ、ラカン、オースティン、最後にルジャンドル。2014/05/10