内容説明
教育を基礎づけていた普遍的・超越的な原理が崩壊し,グローバリゼーションとあいまった新自由主義的教育改革が進行しようとする中で,「教育」という思想の危機が臨界に達しようとしている.「教育はいかにあるべきか」を語る,現在の錯綜した言説を位置づけ直し,教育の未来に向けて,新たなオールタナティヴを構想する.
目次
目 次
はじめに
Ⅰ 現代の教育
1 「教育をいかに組織化するか」という言説について
「教育」という思想の危機/普遍性を持つ原理を求める理論/当面の所与性への依拠/何が望ましいかを当事者に委ねる方向/未来予測・未来社会の構想からの演繹
2 教育の変動への視角
社会化と配分/経済成長期までの教育/個人化/グローバル化/教育問題の構図
Ⅱ 個人化・グローバル化の中の教育
第 1 章 教育をめぐる構造変動
1 制度につなぎとまらない個人
「理解不能な他者」としての青少年/ 「学校的なるもの」からの離脱
2 制度の改善・改革要求
均質性や包摂性への不満/学校選択と多様化の問題/選択肢を選ぶのは個人的問題か
第 2 章 一つの解としての新自由主義的教育改革
1 制度と個人の再調整
個人と制度の間のきしみをどこまで甘受するか/個人と制度の軋轢の問題をどう考えるべきか/参加の可能性と問題
2 新自由主義的改革
改革の論理/批判の困難さ
3 オプションの必要性
第 3 章 一つの代案
何を選択すべきか/教育の未来に向けて
Ⅲ 基本文献案内
あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
里馬
4
【要再読】教育に関する現状の示唆。思考のフロンティアは初めてだが、これによって読者が開拓されるのみでない。読後もっと勉強して、読者自身が諸問題を開拓していかねば!と悔恨される。我々はどう教育されたか、どうしているか、どうし得るか、どうすべきか。2010/05/31
バイオ燃料
2
新自由主義的な教育改革論に否定的であり、経済成長に依拠せず豊かな社会を実現する必要性を論じる。能力主義や経済主義に傾倒する現行の教育を論じた後に問題点を述べ、包摂されない層への再分配の必要性を説いている。頁数も少なく筋も追いやすいので読みやすい。しかし、頁数の制限のせいかやや腑に落ちない点はある。そこは豊富な文献案内で補うしかないだろう。個人的には、学校内での異質な他者との交流は長期的には価値観の多様化につながるという点に引っ掛かった。確かにそうだろうが、結局はそこで成功した勝ち組の視点ではないだろうか。2019/02/13
keepfine
1
良著。ギデンズを援用。分配志向でない日本の教育は労働力=納税者の育成という長期的視点がなく、「新しい教育観」は基準の不明瞭さや恣意性に問題。目的も短期的。流動化した労働市場に対応できるような教育、長期的視座に立ち知識重視教育への転換が望まれる。2017/05/20
けいぎ
1
もっとはやくに読んでおけばよかった! という本の1つ。教育を語る人すべてに!2013/07/30
Falke
1
初めてこの著者の本を読んだが、ぼくにとって、今までで一番優れた教育学者だ。今までに、いろいろな教育論を見聞きしてきたが、どれも違和感があった、というより、考えが偏っている気がしていた。しかし、この本では、ぼくが抱えていた疑問の多くに言及されており、多角的に論じられていた。これから、この著者の本をたくさん読もうと思う。2010/03/08