内容説明
西洋の衝撃がもたらしたアジアにおける近代の始まり──それは,西洋との間で摩擦と抗争を産むと同時に,アジアの内部にこそ摩擦と抗争,分裂と亀裂を産んだ.アジア/日本の近代経験,またアジア連帯論がはらむ連帯/侵略の両義性を,越境し相互浸透していく近代性の力と,それがもたらす矛盾と葛藤を通して問い直す.
目次
目 次
はじめに
Ⅰ 東アジアにおける「近代」の経験
第 1 章 アジア/日本を論じる視座
1 竹内好の視座
2 「興亜論」/「脱亜論」の再検討
3 近代批判の視座
4 東アジアにおける「近代」
第 2 章 アジア/日本の亀裂と交錯
1 「世界市場」の衝撃と東アジア相互の「開港」
2 甲申政変をめぐる葛藤
3 世紀転換期の文明化論
Ⅱ 東アジア変革論の系譜
第 1 章 戦間期の帝国改造論
1 民本主義と〈多文化帝国〉論
2 植民地/帝国における「社会」問題
第 2 章 戦時期の東アジア変革論
1 戦時広域圏論の台頭
2 「東亜協同体」論をめぐる葛藤
終章 世界戦争後の東アジア──冷戦/脱冷戦
Ⅲ 基本文献案内
あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
UCD
3
近代日本と東アジアの関係は教科書でならうほど単純なものではなかった。「脱亜論」対「興亜論」と、単純な二元論で語ることはできない。そこには一貫して「近代の暴力性」なるものがあった。「「近代」を身にまとうことによって、「発展」や主体化への欲望がうまれ、またそれとともに否定すべき「停滞」した過去が析出されます。そこでは、自己の内部/外部に否定すべき他者が析出され、その矛盾・分裂をかかえながら、自己を主体化し「発展」へ向けて駆動する力が作動します」。西欧の悪しき進歩史観を反省せねばならない。2014/02/06
Louis9th
0
アジア、というより東アジア。正確には近代化から大東亜を通しての日中韓に限られた話題である。中韓という出遅れた二国と明治維新に成功した日本との相互意識について多角的に取り上げたガイドブックのような著作である。東アジアという同朋意識がある一方で先進後進というオリエンタリズムが同居していることや、実際に軋轢がどのような形で顕現したかまで詳しく述べられている。また、巻末の参考文献案内もお世辞にも見やすいとはいえないが豊富であった。詳しく調べる際の羅針盤になりそうな一冊。2012/04/11
ヤマニシ
0
「アジア/日本の絡まりあう関係、そこでうまれる矛盾・葛藤に踏みこみながら、「近代」の暴力を批判的に再検討しなければなりません。」(p18-19)2024/05/02
politics
0
福沢諭吉の「脱亜論」に関する部分など、一部著者の意見に賛同できないところは多々あるものの、日本とアジアとの関係を思想史的に知るには良いかと思われる。矢内原忠雄の評価はやはり難しいのだなと感じた。戦後にも「植民地なき帝国主義」があったとの指摘は私自身は微妙なのではと思う。2019/02/24
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