内容説明
この奇怪なる現象の本質とはなにか.我々を魅惑するその不可思議な力は,どこに宿るのか.近代日本におけるその観念の変遷を,「「国体」ナショナリズム」という視座から明らかにし,現在のグローバル化の地政学的な変容のただ中における,その不気味な実在感の意味を考える.いま,ナショナリズムの呪縛が,ここで解かれる.
目次
目 次
はじめに
Ⅰ ナショナリズムの近代
1 ナショナリズム,近代の「病い」か「救済」か
2 〈自然〉と〈作為〉のあいだ
3 ナショナル・アイデンティティとナショナル・ヒストリー
Ⅱ 「国体」ナショナリズムの思想とその変容
第 1 章 基本的な視座
第 2 章 「国体」思想のアルケオロジー
1 「日本という内部」の語り
2 政治と美のデュアリズム
3 繰り返される伝統=自然への回帰
第 3 章 「国体」の近代
1 作為的〈自然〉としての「国体」
2 「ココロ主義」と「天皇の軍隊」
3 「憲法/(教育)勅語」体系としての「国体」
第 4 章 「国体」の弁証法
1 「国体の本義」と「空疎さ」のナショナリズム
2 「国体」の境界と変容
第 5 章 戦後「国体」のパラドクス
1 戦後の原像と「断絶/連続」のパラドクス
2 「談合体制」としての戦後「国体」
3 「国体」の成熟と喪失
むすびにかえて
Ⅲ 基本文献案内
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遠山太郎
3
1)p1ボブズボーム「1780年以後のネイションとナショナリズム、そのプログラム,神話,現実」p4 橋川文三 「ナショナリズムーその神話と論理」p28 リービ英雄「日本語を書く部屋」p32 網野善彦「「日本」とは何か」p63 西周「兵家徳行」山縣・西「軍人訓戒」ー『誠心』p70 丸山眞男「政事の構造」12巻p74 竹山昭子「戦時下のラジオ講演」『年報 近代日本研究』12 ー「天皇に関するキーシンボル」上位11種は「ほぼ国体語」p81 北一輝『国体論及び純正社会主義』262頁ー「穂積博士」「東洋の土人部族」2014/03/06
テッテレこだち
2
日本における国体とナショナリズムについて、江戸から明治維新、第二次大戦から戦後に至るまでを視野に、思想の演変を追ったもの。シリーズ的に多分入門書の類だが、己の浅学故にところどころ目慣れない言葉が出てきて、結構検索をかけた。後半にある戦後思想の個別の比較部分が興味深い。主題的にも紙幅的にも日本とアジアとの関係の部分に書き足らぬ思いがあったのではとも感じるが、そこを現在も形を変えて存続しようとするグローバリズムとしての「帝国主義」への批判で述べている気がする。結びの朝鮮半島についての記述、現状を思うと辛い。2024/04/15
あなた
2
要点はひとつ。ナショナリズムは、モジュールであるということ。ナショナリズムは可変性があり、伝染性もあり、かつそれでいながらも内実は空白であるということ。この内実がからっぽというのが非常に肝心。だからこそ、意味の充填=補填は永遠に続くのである。ナショナリズムに果てはない。てんぷらと皇居の中心はからっぽといったのはロラン・バルト。2009/07/04
りり課長
0
95P 短い本ではあるが大変硬質な批判的思考に感銘。 2001年発行でやや古くはあるが、現今の混迷に対し予言的でもある。 良書である。2013/02/01