内容説明
関係論的権力観から,空間論的権力観へ-この転換は,権力をめぐるパラダイムにどのような意味をもつのか.果たして「最終的な解決」をもたらす権力空間は,存在するのか.我々の権力観が孕む陥穽を明らかにし,多様な権力空間に立ち現れる権力現象の考察から,普遍性を断念した後の,自由と抵抗,解放の可能性を探る.
目次
目 次
はしがき
Ⅰ 権力はどう語られてきたか
Ⅱ 権力をどう変えるか
第 1 章 権力は上からくるのか下からくるのか
第 2 章 権力と暴力
第 3 章 つくる権力とつくられた権力
第 4 章 権力と自由
Ⅲ 基本文献案内
あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
白義
11
単純な権力の実体化を避け、フーコー的なミクロのネットワークとしての権力を軸に、権力という現象を深く語った秀逸で濃密な入門書。主体同士の権力関係から、主体をも作り出す空間権力まで考察を進めていき、解放の困難さ、不可能性から具体的な場での実践、変容を目指していく。アレントやシュミット、グラムシにベンヤミン、ラクラウらの権力観が平易に語られていて、政治学と現代思想の幸福な融合といった感じ。薄いけど新書数冊分くらいの濃さがある。権力と自分自身の関係をどう捉えるか、権力といかに向き合うかを考える上で、必読の本2011/10/26
またの名
10
権力を持つAが働きかけてBを従わせるというシンプルな図式においても、権力者Aの意図や欲望は具体的な内容を持ってるのか等と疑える問題から議論を開始。意図や意志をはっきり持った主体を想定する自由主義も悪人感が凄い権力者像を抱くマルクス主義もイマイチとみなす本書は、結局フーコーの多元的で中心のない権力観に依拠。強大な権力を名指すほどその指摘行為が余計に権力を強化する論が今でも有効には見えるけど、現実には一人の専制的権力を立てて忖度し続けるヒエラルキーがなお実在するし、批判されてるラクラクは左翼復興でかなり元気。2019/07/06
Arowana
9
ルソー・ホッブズから構造主義(特にフーコー)、米現代思想(リベラル・多文化主義など)を中心にわかりやすく解説されており、おおまかに復習するのに役立つ仕様になっていますが、紙面の都合上全てが網羅されているわけではありませんのでお気をつけ下さい(例えばルーマンの予期理論などは無記載です)。2013/09/14
void
4
【★★★☆☆】権力構造を、主体間(A→B)で捉える伝統的なものから、アクターが複雑化し不明瞭に分散している、場として捉える見方の必要性が基本テーマだが、両者とも美点・欠点をバランスよく記述しているし、細部も参考になる。共和主義とナショナリズムが(国民・血といった)継続性で類似していることや、そういった共和主義の安定性に比べてアーレントは時々のactionに力点があるという違い、「自由主義」は権力を抑え否定しようとせんがため、一元的な権力(敵)が固定化・強化されるという側面…。2013/09/02
ぼけみあん@ARIA6人娘さんが好き
3
慣れないテーマだからか、今ひとつピンと来ない部分が多かった。図書館本だったので、いつも通りコピー用に付箋を付けながら読んだのだけど、その付箋箇所のチェックをしている時間が足りず(いったんたくさん付箋を付けた後で取捨選択するのだけど、上記の理由でいまいち絞り込みづらかったことも)、付箋箇所のメモだけ取って返却。何れ折を見て再読したいと思っている。2015/01/31