内容説明
建国以来、中国の都市と農村には超えがたい経済格差があり、福祉、医療、教育なども含めた生活の質の違いが、固定化された形で続いてきた。格差はどのような政策のもとで生まれたのか。またその中で人々はどのように生きたのか。2019年の今、一方の農民は「小康」の生活を送れるようになったのか―。本書では現代中国を特徴づけるこの「二元的社会」に焦点を当て、1949年から2019年までの70年間を、その時代の人々の語りとともに振り返る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さとうしん
13
包産到戸(農家生産請負制)が大躍進の頃から地方で個別的・実験的に導入され、改革開放期にも中央からの大動員ではなく、地方で自発的に導入され、そうした実践を通じて中央が認識を改めたというのは、「中国は一党独裁だから経済成長できた」という俗論の強い反証になるかもしれない。また反右派闘争は、毛沢東が民主党派に率直な意見・批判を求め、彼らが十二分にそれに応えてしまったところから始まったというのは、逆に建国当初は民主党派の役割が定まらない部分があったことを示していよう。2020/01/21
かんがく
10
「都市と農村」を軸に、中国の歴史を読み解く。具体的な数値・グラフなど客観的データが豊富な一方で、実際の中国の農村や都市で過ごした人物の逸話も挿入されていて、社会主義体制から現代中国への変動の実態がよくわかった。今後、戸籍改革がどこまで進むのか注目。2020/09/05
Hatann
6
中華人民共和国建国以降の都市と農村の二元的社会を概説し、農村問題に対する一連の政策を素描する。古代では農民が軍事費を支え、現代では農民が都市と工業化を支えた。支援体制を安定させるため、農民は移動の自由を制約され、社会保障・就業機会の格差を強いられた。改革開放路線後に農村を巡る環境は改善されるも、都市との格差は更に広がる。2000年以降は常に三農問題が最優先課題として取り上げられるが、格差が埋まる実感に繋がっていない。農村における農業以外の収入の仕組の重要性なども歴史的に説明される。簡易に纏まった良著。2020/03/04
さな
0
現代中国の入門として手に取った。文章に力があり、非常におもしろい。世界史は中途半端にしかやらなかったので、文化大革命や改革開放がどういうものなのか初めて理解した。以下、印象に残ったワードを挙げると、戸籍は戦後になって作られ農村と都市でわかれていること、農村人口が8割を占めていたこと、一号文件、人民公社と管理体制、生産体調のしんどさ、都市から農村への反哺の時代、意外にも中央政権が一農民の手紙を取り上げて対応していること、農村には社会保障がないことなど。2024/03/25