内容説明
電気やガスのなかった時代、人々は、火をどのように使って暮らしてきたのか。先人たちが生活の中心に据えてきた火にまつわる事柄や風習を紹介。柳田の鋭い観察力と膨大な知識をもとに、生活史をたどる。
※本作品は紙版の書籍から索引が未収録となっています。あらかじめご了承ください。
目次
やみと月夜
ちょうちんの形
ろうそくの変遷
たいまつの起こり
盆の火
燈篭とろうそく
家の燈火
油とあんどん
燈心と燈明皿
油屋の発生〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
39
人間の生活に火がどのように関わってきたのかを考察した本。提灯や蝋燭、行灯と火の変遷が語られており、昔の闇を駆逐しようとする動きが優しく語られている。これを書いている今、夜なので電気を消してみたが、遠くの灯りで部屋の中がぼんやりと見える。火の使い道は明かりだけではなく、木の摩擦から火打石のような火のつけ方、囲炉裏やかまどの調理に使う火。それ以外にも盆の送り火や、家庭における女性の火の管理なども語られていて興味は尽きない。スイッチ一つで付く今と違い、古人にとってその管理は一大事だったという事を認識させられた。2013/08/05
てれまこし
3
戦時中の灯火管制下、青少年、特に女性を対象に、火の使用に関する歴史が語られる。当り前のものが当たり前ではなくなったことを奇貨として、若者に史心を育てようという試みである。灯火や囲炉裏、竈など身近なものの話で読者の注意を向け、燃料という経済問題へ視野を広げ、最後は大東亜圏の他民族への同情と関心をさそうという考えられた構成になっている。そこで語られる歴史は進歩の歴史であるが、その進歩とは運命でも偉人の業績でもなく、庶民が生活を改善しようと試行錯誤してきた結果である。この事業を引き継ぐのは読者自身なのである。2018/02/06
bouhito
3
火というのは、結局よくわからない。人間を生かしもするし、殺しもする。物質ではない。現象である。人間は常に火とともに生きてきた。生活に火は必需品だった。しかし、そう言えるのもいつまでだろうか。昔、火があった、と言う時代が来てしまうかもしれない。2016/01/09
ダージリン
2
当たり前だが電気、ガスが無い時代には、火は生活の中で重要な位置を占める。嘗ては火を絶やさぬように注意を払ったというのも頷ける。過去の生活の一端が垣間見え、道具などの工夫の変遷も見えて興味深い。神事では石炭などは焚かずに、松が使われるという記載があるが、火と信仰はしっかりと結びついてもいるのであろう。2018/02/06
さと
1
他人おそろし、やみ夜はこわい 親と月夜はいつもよい 灯りがなかった昔の子守唄に始まり、火をめぐる日本人の生活史をわかりやすく辿る。清い火、穢れた火。火をおこすのが簡単ではなかった故の思想だろう。2021/08/15