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内容説明
山で暮らす人々に起こった悲劇や不条理、山の神の嫁入りや神隠しなどの怪奇談、「天狗」や「山男」などにまつわる人々の宗教生活などを、実地をもって精細に例証し、透徹した視点で綴る柳田民俗学の代表作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
103
柳田の「遠野物語」と対をなす代表作だそうです。再読なのですがあまり覚えていません。最近あるコミック(「鬼滅の刃」)と関連ある作品ということで読みました。30の話が収められていて(ひとつの話が4~5ページです)山で生活をしていた人々の話がかなり具体的に語られています。いまの日本ではこのような人々がいたということは信じられないのでしょう。2023/07/08
翔亀
57
生々しい「遠野物語」の発展編と言っていい。一つは、怪談や迷信と一線を画す口承文学が、歴史を遡って始原の姿を探るという研究に発展したという意味で。二つは、遠野物語の山人に、山姥や天狗、神隠や鬼子を加え、この口承の背景に日本民族と異なる先住民族=縄文人の生き残り、実在を論証しているという意味で。本書では既に絶滅したと言い切っているが、若い頃は現存を信じていたという。その民族は外見からして、顔が赤く背が高く言語が違う明らかな異民族。これでもかという例証の積み重ねに、山の奥に今でもいるのではないかと思ってしまう。2015/10/17
HANA
54
何度目かわからない再読。読む度に「山」というのは日本人にとって近くて遠い異界だったのだな、と思い知らされる。冒頭の二つの人間苦の記録は、初読の時以来題名を見るたびに思い出す。一般的には山人の実在を考証した初期民俗学の重要な書物なのだろうが、個人的には天狗や山人、山の神への嫁入り、山に魅入られた人々等、山に関する奇譚集として読めた。怪異、幻想文学に興味があるなら必読の一冊だと思う。それにしても収められた数多くのエピソード全てが、『遠野物語』と同じくどことなく懐かしい輝きを放っているように感じられる。2014/03/29
鯖
17
「山の神に嫁入りすということ」「巨人の足跡を崇敬せしこと」等、タイトルだけでワクテカしちゃう30の論考からなる名著。妙高山に硫黄を取りに入ると天狗に首を後ろにねじ切られて死んじゃう話とか天狗、巴御前か。山に入り世を捨て仙人になりかけた元小学教員がマタギの弁当を食べちゃったら「穀物の味が恋しくなって」里に戻ってきた話とか。やっぱりどれもこれも面白かった。2021/03/28
ぱせり
17
現在、深い山はあっても、底が知れないと思うことはあるのだろうか。普通に暮らす人びとの里のすぐその地続きに。今、さらに新しい物語が必要になっているような気がする。もしかしたら、静かに生まれ出ているのだろうか。この本を読みながら、先日読了したばかりの梨木香歩の『海うそ』を重ねていました。 2015/01/05