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内容説明
古来伝承されてきた神事である祭りの歴史を「祭りから祭礼へ」「物忌みと精進」「参詣と参拝」等に分類し解説。近代日本が置き去りにしてきた日本の伝統的な信仰生活を、民俗学の立場から次代を担う若者に説く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
メタボン
32
☆☆☆★ 大学での講義をまとめた著作。限界集落が増えていく今の日本では、若者の減少による被伝承者の不在もあり、豊かな民俗芸能、祭事の消失の危機にある。祭とは何かという根本的なことも含めて、柳田国男のような綿密なフィールドワークは貴重だ。。信心のないものに見せたくないので儀式の最も神秘な部分は暗闇で行う、くんちの由来は9月9日の節供、ヨミヤの由来は忌み屋、すなわち忌みを守る場所。2022/09/25
弥勒
8
少し難しいことも書いてあったけど、いろいろと目からウロコのようなことが書かれてあった。例えば、初詣だが、私たちは個人祈願しに行くことが初詣のように思っているが、それは現代の風習であり、古来からのスタイルではない。古来、神、特に氏神として奉られている神はそこの共同体(群など)の望みを聞き叶えてくれるものであると考えられており、個人的な願いを叶えるようなことはまず考えられていなかった。これを知って、私はこれまでの神についての認識を改め、古来よりの日本人の美徳を受け継いで行きたいと思った。2015/07/31
ダージリン
5
お祭りについての論考かと思って読み始めたのだが、日本人の信仰、神への対し方などが語られる。太平洋戦争直前に学生に語られたものだが、まさにこの時期だからこそ語られたと思えてならなかった。冒頭で学生に対し、学者とは医者・易者・験者・芸者と同様「者」の字のつく者として別扱いされ、いったんこの道に入れば再び尋常の民衆生活に参加することは予期しなかった、と話している。なるほど、古い時代の学者とはそういうものであったかと思った次第。本論以外でも色々と興味深い事柄を知ることが出来る。2018/05/03
うずまきねこ
3
大変興味深い話。東京帝国大学での講演を元にまとめたもののようだから読むこちら側としては、自分の生活と照らし合わせながら読むことが出来ました。祭が「祭礼」となったのは見るものの審美眼を意識した結果であるというのが面白かったです。「見る側」と「見られる側」という観点が窺えます。2つの「解説」も要約調のものと、民俗学と柳田国男を大まかに見るものとで用意されており勉強になります。2016/05/29
肉欲棒太郎
3
「日本神道の原始形態を、全力を尽くして尋ね求める」ことを目的とした学生向け講義録が戦時下(1942年)に書かれたことの意義は重要で、恐らく柳田のモチーフは、古来の常民信仰(=祖霊信仰)とその神事である「祭」の研究を通じて当時の国家神道イデオロギーを暗に批判する、というところにあったのだろう。しかし天皇制批判のモチーフを欠いた柳田神学に、果たして国家神道イデオロギーを根底から批判することは可能か?2015/11/06