内容説明
『三教指帰』で仏教の思想が最高であると宣言した空海は、多様化する仏教の中での最高のものを、心の発達段階として究明する。思想家空海の真髄を示す、集大成の名著。詳しい訳文でその醍醐味を味わう。
※本作品は紙版の書籍から解説が未収録となっています。あらかじめご了承ください。
目次
秘蔵宝鑰 巻の上(異生〓(てい)羊心
愚童持斎心
嬰童無畏心)
秘蔵宝鑰 巻の中(唯蘊無我心 十四問答 抜業因種心)
秘蔵宝鑰 巻の下(他縁大乗心 覚心不生心 一道無為心 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さばずし
24
悟りへの道を10段階にして各仏教を比較。実は皆、本質は同じ事を言ってるのだと。本文は途中から難解になるが、それでも空海の例えはわかりやすい。とりあえず自分は第一住心も抜けてない。苦しみから抜ける世界は遠いものである。2022/01/02
Hepatica nobilis
11
空海晩年の著作で天皇に献上されたと言われるものらしい。書下し文も最初は参照していたが面倒になり、「意訳」の方だけ読んだ。それでも「三教指帰」に比べると難儀する。漢字の用語のオンパレードで文章が読みやすくなっていても相殺すること甚だしい。しかし大変体系的に説かれていて、その教義も幅広い。そして空海言うところの、顕教に対する密教の至上主義。法華経よりも華厳経を上位機に置いているのも興味深い。文章そのものは譬喩も巧みでつまらないとは思わないが、とにかく歯が立たなかった。2018/11/04
Naoko Takemoto
10
あるエッセイで、ネタ消費について語られていたのを読んで気になっていたのだが、結局インスタもSNSも自己主張であり、秘蔵宝鑰の序文では、『人はどこで生まれてどこに死んでいくのかわからない』とあり、そういう儚いものが人というものなら生を受けている間に自己主張があってもいいのではないかと。弘法大師さまはまさかこんなふうに解釈されているとは思いもしなかっただろうし、正直、この考え方が通じるものかわからない。ただ、悩んだ時々に折に触れて頁を開き、歳を経るごとに理解が深まり、導いていただければと思う。2020/08/08
不識庵
10
真言密教の教義を説いているのであるが、そこから何を受け取るにせよ、必ずしも学ぶ目的で読む必要はない。読んでいて空海が私自信に向けて語っているような気になった。弘法大師を身近に感じる体験だった。その割には時間がかかった読書であるが……。2019/07/01
デビっちん
7
24歳のときにあわらした『三教指帰』は、57歳で『秘蔵宝鑰』へと進化した。人間の心は、縁に遇えば流動的に変化し、次第に向上の道をたどっていく。空海は、その向上過程を過去に示された儒教、道教、小乗仏教、大乗仏教、密教などのさまざまな価値を整理し、それに順序をつけて並べ、万人に共通する10種の段階に分類した。空海が序文で述べているが、文章があるからこそ、先人が苦労して切りひらいてくれた知恵を享受できる。そんな恵まれた時代にいるにもかかわらず、自分の目標を見失っていることさえ気がついていない。空海すげー!2015/10/08