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内容説明
相手の境遇や困難を思いやる細やかな文体に、仏教思想の根本を込めた日蓮の手紙。仏典や故事、説話を駆使したその遺文からは、平等と人間尊重を説く『法華経』や、国家の腐敗を糺し災害や疫病に立ち向かう『立正安国論』のエッセンスが立体的に立ち上がる。人生相談あり、生活指導あり、激励あり。息子ほどの歳の少年へ、夫をなくした女性へ、子に先立たれた母親へ。厳選された25通の原文・現代語訳・解説によって人間日蓮の実像に迫る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ロビン
16
私の属する創価学会は日蓮大聖人を信奉しているので、大聖人のお手紙や文書をまとめたものー『御書』には日頃から親しんでいるが、植木先生の解説は信仰面でなく思想面から大聖人に迫るものとはいえ、日蓮という人の内面について素晴らしく深い理解に到達されていると感じた。日蓮大聖人は苛烈、激越な他宗への破折ぶりから怖い人と思われがちだが、非常な人間愛の温かい人であり、大胆さと細心さを併せ持つ勇者であり賢人であった。相手に合わせ、寄り添うようにして書かれたお手紙は、そうした実相を知るのには最適であろう。非常にお勧めの一冊。2022/02/04
真琴
9
「100分de名著」を見て原書を読みたくなった。340通ほど残っている日蓮の信徒への手紙の中から25通が収められている。訳者の言葉どおり「人生相談あり、生活指導あり、激励あり」の手紙。日蓮というと国家主義者の印象が強かったが、人情深い方なのだと印象が変わった。宮沢賢治や石橋湛山、本阿弥光悦等が帰依した法華経とはどのような教えなのかと興味もあったので、その教えの一部にも触れられた。2024/04/06
クサバナリスト
9
今月のNHK「100分de名著」の予習として読んだ。2022/02/02
浅香山三郎
8
NHKEテレ(教育テレビ)の「100分de名著」を書籍化したものといふが、放送は見られなかつた。偶々、必要があつて法華経や日蓮宗の中身を勉強し、その流れで読む。富木常忍・四条金吾・池上兄弟・南条家など日蓮が自らの帰依者にあてた手紙を読み込んでゐる。教義のことにとどまらず、相手の性格などを理解した上で、丁寧な振る舞ひかたの指導を細かく述べる場合が多く、日蓮の人間味がよく伝はる。手紙による人格的な繫がりが日蓮の教説の根強い支持の裏付けにもなつただらうことを窺はせる。2022/05/01
Norimasa Saito
4
日蓮は多くの手紙を残す。現存するだけで340通。法然は直筆の手紙なし。道元はほとんど手紙を書かなかった。親鸞の手紙は誰にあてても同じ。日蓮の手紙は全て違う。相手に合わせて具体的なアドバイス、励まし、指導が散りばめられている。そこには精神論も抽象論もない、宗教家にありがちな教条主義もない。あるのは人間にたいするとめどもない愛情。法華経は釈尊滅後五百年後頃に編纂された。差別化、権威化した仏教界に対して「原始仏教の原点に還れ」との主張があった。「如我等無異」誰でも瞬時に仏になれる万人成仏の教え。再読したい良書。2021/10/03