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内容説明
福澤諭吉は、明治8年に書かれたこの『文明論之概略』において、維新革命後の日本が迎えた新たな状況を考察し、社会に向けて「まずは西洋文明を目指すこと」を説いた。日本の近代化の歩みを決定づけた名著のひとつに数えられているが、それを全新訳したのが本書である。確かな考察に基づいた平易で読みやすい現代語訳に解説を付した保存版。
第一章 議論の本位を定めること
第二章 西洋の文明を目的とすること
第三章 文明の本旨を論じる
第四章 国民の智恵と道徳を論じる
第五章 前の議論のつづき
第六章 智恵と道徳の区別
第七章 智恵と道徳が行われるべき時代と場所とを論じる
第八章 西洋文明の由来
第九章 日本文明の由来
第一〇章 自国の独立を論じる
解説/人間・この豊饒なるもの 福澤諭吉論
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みのくま
9
明治維新を35歳で迎えた福澤諭吉は、旧時代の感性を持ちつつ新時代の最先端を走る俊英である。しかし、解説者の先崎彰容によれば福澤は決して西洋化礼賛のみの偏った人物ではない。極端に西洋化を勧めるでもなく極端に反動的なわけでもない。本書はそも「文明」とは何かを探究する。文明とは、地球上全人類が幸福に暮らせる世界である。西洋化はその途上の手段に過ぎない。福澤は、本当の文明は数千年先かもしれないと語る。ぼくは、福澤の未来展望は現代人と比べて相当に明るくて羨ましいと思った。もう誰もそんな文明が訪れないのは知っている。2018/09/18
くろみつきなこ
3
福翁自伝を読んだので、思想の背景が繋がって味わい深かった。下士に生まれ門閥に苦しめられ明治維新を迎えたことなど、まさに「あたかも一身で二度の人生を生きたようなもの」の通りだろう。福沢諭吉は当時の植民地化される他国を見て大層な危機感を持っており、そうされないために文明化(≠西洋化)が必要だと述べているが、現代にも通じる点が数多くあり、何度も読み返したい。特に智徳を私徳、公徳、私智、公智の4つに分類し論じている点に最も感銘を受けた。日本人(儒学)は古来より私徳のみを重視し公徳がないことなど、まさに最近→2023/03/11
バルジ
1
名著『文明論之概略』の現代語訳であるが、読みやすいのは当然までも巻末の解説も素晴らしい。 日本文明の病巣を「権力の不均衡」と喝破し、「文明」とはどういった性質の物なのかを論理建てて丁寧に論じている。 西洋を範としながらも、あくまで日本の「独立」のための「文明」であると強調する福沢の姿は、良い意味での「ナショナリスト」と言うべきであろう。2018/08/19
紙狸
0
福澤諭吉の主著を、現代語訳で読めたのはありがたかった。原文の文体は明確だが、語彙や単語の意味が今日とは違っている。この訳はこなれていて読みやすい。読んで感じたのは、福澤が西洋から押し寄せてくる「文明」と格闘していることだ。六つの巻からなる。特に興味深かったのは、「巻之一」と「巻之六」だった。国家を正面から論じており、今日的な意味を持っている。福澤は「国体は国家の根本である」(p51)という。ここでの「国体」は皇統が万世一系であることとは異なる。「国体を保持するとは、自国の政権を失わないこと」(同)という。2018/01/06
Ryo
0
福沢諭吉先生渾身の文明論。 有名な「あたかも一身で二度の人生を生きたようなもので、一人で二つの身体があるようなものだ」に始まり、激動の明治維新を経験の上で西洋の近代化を捉えながら日本の目指すべき道を説く。 孔子や孟子、キリスト教の分析(切り捨て?)、当時の日本の権力格差、知恵と道徳の欠如を厳しく指摘しながらも日本が国家として独立を維持するために日本国民を文明へと導いていくのだ。 ターゲットは50代の儒教に精通した知識人だったそうな。 10年後また読みたい。2020/06/01