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【じんぶんや第45講】 山本淳子選「平安文学とその周辺」

山本淳子さんエッセイ「古典との出会い」

j_yamamoto.jpg 古典との出会いは、幼い頃だった。祖母が寝物語に話してくれたのだ。鮮明に覚えているのは『枕草子』の「高炉峯の雪」の段。祖母はまず中宮定子になり切って、上品に「清少納言よ、香炉峯の雪はいかに」と言う。次は清少納言になって「はいっ」と答え、表情も誇らしげに御簾を高々と揚げるポーズをとる。最後は「中国に有名な『香炉峯の雪は御簾をかかげて見る』という詩があったとさ」。子供は同じ話を繰り返し聞くのが好きなもので、ねだって何度も演じてもらった。祖母の声が今でも聞こえてくるようだ。

 高校生の時に『枕草子』を読んで、祖母の台詞やポーズが所々原典と違っていたことを知った。でもそれでこのエピソードの「心」が損なわれたわけではない。教養あふれる定子と清少納言のおしゃれな会話。息の合った二人の関係。私にはそれでよかった。

 その定子が実は悲劇的な人生を生きた人物だったと知ったのは、つぶさには研究を始めてからのことだ。家の没落、本人の出家、夫一条天皇との離別と復縁、そして貴族たちからの批判。二十四歳で若すぎる死に至るまで、彼女の人生は過酷な運命に翻弄され続けた。「香炉峰の雪」は彼女の人生が暗転する前とも、後のことともされる。後者ならば、定子と清少納言はいったいどのような気持ちでこのような掛け合いを演じたのだろうか。

 定子と一条天皇とのひたむきな愛を研究者以外の人にも知ってもらいたいと思って原稿を書き、書くうちに中宮彰子の健気さにも気がついて、出来上がってみたら登場人物百余人、原稿用紙五百枚近くの分量になっていたのが『源氏物語の時代―一条天皇と后たちのものがたり―』(朝日新聞社)だ。前著でお世話になった和泉書院の社長にお送りしたら、「本から山本さんの声が聞こえてくるような気がした」と言われた。祖母のことが頭に浮かんだ。そうだ、あれこそが「ものがたり」だった。人の「心」を語り伝えるということ。私の「ものがたり」はあそこから始まっていたのだ。

 古典文学は、登場人物であれ作者であれ、そこに人がいるから楽しい。文学だから当然だと思われるかもしれないが、その人とは現代の誰かではない、千年前の人なのだ。紫の上の思いに触れ、一条天皇を慰めたい気持ちになる、こんなタイムトリップが味わえるのは古典文学くらいではないだろうか。

  特に幸福を感じるのは、今自分の抱いている苦しみと同じものを千年前の作品に見つけた時だ。「大丈夫、一緒に悩もう」。そう言われている気がする。あるいは肩を抱く手の温もりを感じるような。自分の悩みは消えることなく目の前にあり続けるのに、痛みはもう静かに和らいでいる。

 今年、源氏物語千年紀。これを機会に、一人でも多くの方に古典作品に触れて頂きたいと思っている。まんがでも現代語訳でも古典エッセイでもいい。まずは出会うことが大切なのだから。古典との素敵な出会いがあなたに訪れることを、心から祈っている。

【山本淳子】


山本淳子(やまもと・じゅんこ)さんプロフィール

平安文学研究者
京都学園大学教授
石川県金沢市出身

1960年生まれ。1983年、京都大学文学部卒業。高校教諭等を経て、1999年、京都大学大学院人間・環境学研究科で博士(人間・環境学)の学位を取得。2003年より京都学園大学教員。2007年、『源氏物語の時代―一条天皇と后たちのものがたり―』(朝日新聞社)により、サントリー学芸賞(芸術・文学部門)受賞。2008年4月より現職。紫式部の和歌・日記、また『源氏物語』制作の背景となった諸状況を研究対象とする。著作は上記のほか『紫式部集論』(和泉書院、2005)、林真理子氏との共著『誰も教えてくれなかった『源氏物語』本当の面白さ』(小学館)。


山本淳子さん選書リスト

待賢門院璋子の生涯 椒庭秘抄

待賢門院璋子の生涯 椒庭秘抄

角田文衛 / 朝日新聞出版
1985/06出版
ISBN : 9784022593818
価格:¥1,512(本体¥1,400)

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山本淳子さんコメント 紫式部の本名を論ずるなど、国史学研究者にして何より人間に視点を当てた著者の個性が最も表れた一冊。崇徳が鳥羽の子ではなくその祖父白河院の子であるとの噂について、璋子の推定生理日から検証を試みたことで知られる。その手法には賛否あろうが、希代の研究であることは動かない。著者は奇しくも源氏物語千年紀の今年他界された。

紫式部

紫式部

清水好子 / 岩波書店
1983/10出版
ISBN : 9784004140276
価格:¥756(本体¥700)

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山本淳子さんコメント 長く絶版になっていたが、このほど復刻された。著者は女性の源氏研究者の魁であり、同期の男性研究者たちからも「天才だった」と思いだされる存在である。本書は世にあまり知られない紫式部の和歌集『紫式部集』を駆使し、娘時代の式部を生き生きと描いている。巻末に『紫式部集』を全編掲載。

源氏の女君

源氏の女君

清水好子 / 塙書房
1988/05出版
ISBN : 9784827340075
価格:¥972(本体¥900)

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山本淳子さんコメント 1959年、三一書房から刊行された単行本の新書版。著者は本書が「婦人学級や各種婦人のグループの方々」に読まれることを念願し、それは叶ったという。「婦人学級」という言葉からも、女性が高等教育から遠く、しかし学ぶことを切望し、自主サークルを作って古典を読んだ時代が彷彿とする。女性の目で源氏の女性たちを愛情深く論じた一冊。

枕草子 上巻 付現代語訳

枕草子 上巻 付現代語訳

清少納言、石田穣二 / 角川書店
1979/08出版
ISBN : 9784044026011
価格:¥950(本体¥880)

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〈上巻〉
山本淳子さんコメント 枕草子の本文に現代語訳と解説を付す。『枕草子』なら萩谷朴氏の新潮日本古典集成本が有名だが、この書をお勧めしたいのはなにより上巻末の「解説」による。曰く「ここであからさまに筆者の経験を述べるならば、筆者にとって『枕草子』はつまらない作品だった」!しかしこれこそが筆者を『枕草子』理解に導くカギになったのだ。

枕草子 下巻 付現代語訳

枕草子 下巻 付現代語訳

清少納言、石田穣二 / 角川書店
1980/04出版
ISBN : 9784044026028
価格:¥1,036(本体¥960)

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〈下巻〉

和泉式部日記 現代語訳付き

和泉式部日記 現代語訳付き

和泉式部、近藤みゆき / 角川学芸出版
2003/12出版
ISBN : 9784043699018
価格:¥777(本体¥720)

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山本淳子さんコメント 本文に現代語訳・解説・年表、しかも参考資料として「帥宮挽歌群」まで付いている。ちなみに『和泉式部日記』は和泉式部と帥宮敦道親王の恋を描いた作品だが、親王はこの4年後に亡くなる。挽歌群はその死を悼んだもので、胸を打つ絶唱が多い。だが本書を選んだのは、おまけがいいからではなく現代語訳と解説が素晴らしいから。従来の書とは違う和泉式部に出会うことができる。

うつほ物語 ビギナ-ズ・クラシックス

うつほ物語 ビギナ-ズ・クラシックス

室城秀之 / 角川学芸出版
2007/06出版
ISBN : 9784043742035
価格:¥884(本体¥819)

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山本淳子さんコメント 『うつほ物語』は古典文学全集でも3冊に及ぶ長編だが、これはダイジェスト版で全体像がつかみやすい。『源氏物語』に隠れてあまり一般にはなじみのない作品だが、実は「三奇人」なる個性的なキャラクターや遣唐使船で波斯国(ペルシャ)まで流されるというスケールの広さなど、面白さが満載だ。個人的には仲忠が妻の難産に取り乱し水垢離する場面が好き。

平安朝の母と子 貴族と庶民の家族生活史

平安朝の母と子 貴族と庶民の家族生活史

服藤早苗 / 中央公論新社
1991/01出版
ISBN : 9784121010032
価格:¥885(本体¥820)

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山本淳子さんコメント これを手に取ったとき、私は高校の国語の教員だった。まだ本格的に研究を志す前で、授業のヒントになればと読んだのだった。著者が歴史資料から繰り出すさまざまの男と女、母と子たちにめくるめく思いで、「平安時代にも人は生きていたのだ」という当たり前のことを実感したものだ。あれから17年、やはりこの書の輝きは失せない。

光源氏と夕顔 身分違いの恋

光源氏と夕顔 身分違いの恋

清水婦久子 / 新典社
2008/04出版
ISBN : 9784787961013
価格:¥1,080(本体¥1,000)

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山本淳子さんコメント 夕顔は娼婦だった?光源氏は夕顔との逢瀬で覆面をかぶっていた?そうした長年の「楽しい」夕顔論を一掃する、正統派の決定打と言える夕顔論。著者は和歌の知識によりつつ、丁寧に『源氏物語』を読みとく。すると今まで隠れていた、あるいは忘れられていた新しい(実は本来の)夕顔像が現われて来る。文章もやさしく読みやすい。

『源氏物語』を〈母と子〉から読み解く

『源氏物語』を〈母と子〉から読み解く

鈴木裕子 / 角川書店
2005/01出版
ISBN : 9784047021303
価格:¥2,700(本体¥2,500)

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山本淳子さんコメント 光源氏との密通によって生まれたわが子を、母・藤壷は「なほ疎まれぬ大和撫子」と詠んだ。彼女は息子が疎ましいと詠んだのか?それとも「疎めない」と詠んだのか?『源氏物語』に繰り返される多くの〈母と子〉の物語を丹念に読む。

田辺聖子全集 第17巻

田辺聖子全集 第17巻

田辺聖子 / 集英社
2005/09出版
ISBN : 9784081550173
価格:¥5,076(本体¥4,700)

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〈第17巻〉
山本淳子さんコメント 私はこれを、『田辺聖子全集』の一冊で読んだ。「姥ざかり」シリーズとの豪華二本立てである。著者は『新源氏物語』では流麗な現代語訳に挑んだが、この『私本』では一転、源氏をユーモア小説に仕立てている。語り手は光源氏のしもべ。「ウチの大将」と呼ばれる光源氏をはじめ、登場人物たちが大阪弁で繰り広げる、絶妙の田辺ワールドだ。

検定絶対不合格教科書古文

検定絶対不合格教科書古文

田中貴子 / 朝日新聞出版
2007/03出版
ISBN : 9784022599179
価格:¥1,512(本体¥1,400)

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山本淳子さんコメント 学習指導要領(平成10年版)では、「詳細な読み取りの指導」を禁じられ「親しみやすく基本的なもの」だけを読むように制限されている高校の「古文」に真っ向から勝負を挑んだ「教科書」。『源氏物語』の若紫と光源氏の新枕が採用されているのが嬉しい。あの箇所は是非男の子に読んでもらいたい。

逢瀬で読む源氏物語

逢瀬で読む源氏物語

池田和臣 / アスキー・メディアワークス
2008/05出版
ISBN : 9784048700245
価格:¥812(本体¥752)

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山本淳子さんコメント いつかこんな本が書かれたらいい、と思っていたら出てしまった。光源氏と葵の上、藤壷中宮、六条御息所...数々の女たちとの「逢瀬」を緻密に読みながら、それらにこめられた『源氏物語』の主題にまで迫る。逢瀬は男と女の魂のぶつかり合いの場。紫式部のそんな思いがはっきりと見えてくる。

源氏物語と日本人 紫マンダラ

源氏物語と日本人 紫マンダラ

河合隼雄 / 講談社
2003/10出版
ISBN : 9784062567886
価格:¥950(本体¥880)

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山本淳子さんコメント 小学館から初版の単行本『紫マンダラ』を改題して文庫化。ユング心理学者にかかれば『源氏物語』はこのようにも読める、という好著だ。紫式部が自らの「個」を見つめその「世界」を記述したのが『源氏物語』という解釈は新鮮で、紫式部の日記や和歌の研究にもヒントを与えてくれそう。

あさきゆめみし完全版 1 源氏物語

あさきゆめみし完全版 1 源氏物語

大和和紀 / 講談社
2008/04出版
ISBN : 9784063754674
価格:¥1,543(本体¥1,429)

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〈1〉
山本淳子さんコメント もう説明など必要ないだろう。「源氏物語千年紀展」にも「源氏物語絵巻」や「源氏物語画帖」と並んで原画が展示された、『源氏物語』まんがの白眉だ。描き分けられた女性それぞれのキャラクターが愛らしい。光源氏が柏木にあてこすりを言う場面では彼の装束に蜘蛛の巣の模様が浮き上がる。

あさきゆめみし完全版 2 源氏物語

あさきゆめみし完全版 2 源氏物語

大和和紀 / 講談社
2008/04出版
ISBN : 9784063754681
価格:¥1,543(本体¥1,429)

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〈2〉

あさきゆめみし完全版 3 源氏物語

あさきゆめみし完全版 3 源氏物語

大和和紀 / 講談社
2008/04出版
ISBN : 9784063754698
価格:¥1,543(本体¥1,429)

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〈3〉


あさきゆめみし完全版 4 源氏物語

あさきゆめみし完全版 4 源氏物語

大和和紀 / 講談社
2008/05出版
ISBN : 9784063754902
価格:¥1,543(本体¥1,429)

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〈4〉

あさきゆめみし完全版 5 源氏物語

あさきゆめみし完全版 5 源氏物語

大和和紀 / 講談社
2008/05出版
ISBN : 9784063754919
価格:¥1,543(本体¥1,429)

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〈5〉

あさきゆめみし完全版 6 源氏物語

あさきゆめみし完全版 6 源氏物語

大和和紀 / 講談社
2008/06出版
ISBN : 9784063755060
価格:¥1,543(本体¥1,429)

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〈6〉

あさきゆめみし完全版 7 源氏物語

あさきゆめみし完全版 7 源氏物語

大和和紀 / 講談社
2008/06出版
ISBN : 9784063755077
価格:¥1,543(本体¥1,429)

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〈7〉

あさきゆめみし完全版 8 源氏物語

あさきゆめみし完全版 8 源氏物語

大和和紀 / 講談社
2008/07出版
ISBN : 9784063755336
価格:¥1,543(本体¥1,429)

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〈8〉

あさきゆめみし完全版 9 源氏物語

あさきゆめみし完全版 9 源氏物語

大和和紀 / 講談社
2008/07出版
ISBN : 9784063755343
価格:¥1,543(本体¥1,429)

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〈9〉

あさきゆめみし完全版 10 源氏物語

あさきゆめみし完全版 10 源氏物語

大和和紀 / 講談社
2008/07出版
ISBN : 9784063755350
価格:¥1,851(本体¥1,714)

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〈10〉

あさきゆめみし 1 源氏物語

あさきゆめみし 1 源氏物語

大和和紀 / 講談社
2001/08出版
ISBN : 9784063600506
価格:¥712(本体¥660)

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〈1〉

あさきゆめみし 2 源氏物語

あさきゆめみし 2 源氏物語

大和和紀 / 講談社
2001/08出版
ISBN : 9784063600513
価格:¥712(本体¥660)

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〈2〉

あさきゆめみし 3 源氏物語

あさきゆめみし 3 源氏物語

大和和紀 / 講談社
2001/08出版
ISBN : 9784063600520
価格:¥712(本体¥660)

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〈3〉

あさきゆめみし 4 源氏物語

あさきゆめみし 4 源氏物語

大和和紀 / 講談社
2001/08出版
ISBN : 9784063600537
価格:¥712(本体¥660)

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〈4〉

あさきゆめみし 5 源氏物語

あさきゆめみし 5 源氏物語

大和和紀 / 講談社
2001/08出版
ISBN : 9784063600544
価格:¥712(本体¥660)

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〈5〉

あさきゆめみし 6 源氏物語「宇治十帖」編

あさきゆめみし 6 源氏物語「宇治十帖」編

大和和紀 / 講談社
2001/08出版
ISBN : 9784063600551
価格:¥648(本体¥600)

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〈6〉

あさきゆめみし 7 源氏物語「宇治十帖」編

あさきゆめみし 7 源氏物語「宇治十帖」編

大和和紀 / 講談社
2001/08出版
ISBN : 9784063600568
価格:¥594(本体¥550)

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〈7〉

「ブス論」で読む源氏物語

「ブス論」で読む源氏物語

大塚ひかり / 講談社
2000/01出版
ISBN : 9784062564038
価格:¥799(本体¥740)

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山本淳子さんコメント 末摘花ばかりが目立っているが、言われてみれば確かに『源氏物語』には不器量な女性が少なくない。醜貌の持つ「醜パワー」を重視する著者が、軽妙な文体で『源氏物語』に描かれた人々の美醜を語りつくすうち、話はやがて美醜・身体の文学史となってゆく。同じ著者の『カラダで感じる源氏物語』(ちくま文庫)もおすすめ。

平安王朝

平安王朝

保立道久 / 岩波書店
1996/11出版
ISBN : 9784004304692
価格:¥842(本体¥780)

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山本淳子さんコメント 国史学において、「古代史」の中心は6世紀から奈良時代まで。平安時代は律令制の解体期とされ、その研究はどちらかと言えば傍流に置かれてきた。平安期が盛んに論じられるようになったのは、ようやく本書の刊行前後からではないだろうか。本書は平安時代史は王朝史であるとの視点に貫かれ、王(天皇)とその結婚、皇統、王権のありかたを執拗に見つめる。天皇たちの欲望と苦悩が見えてくる書だ。

源氏物語の〈物の怪〉 文学と記録の狭間

源氏物語の〈物の怪〉 文学と記録の狭間

藤本勝義 / 笠間書院
1994/06出版
ISBN : 9784305600349
価格:¥1,728(本体¥1,600)

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山本淳子さんコメント 「生霊」は歴史資料には見えず、『源氏物語』の創造物であること、『源氏物語』は生霊の祟りとも登場人物たちの思い込みとも読めるように書かれていること、藤原道長の日記に〈物の怪〉の記述が少ないのは豪胆だからでなく逆に畏怖していたから―。著者は文学作品と歴史資料に通暁する、平安〈物の怪〉の第一人者。〈物の怪〉を語るなら基本書だ。

宮廷文学のひそかな楽しみ

宮廷文学のひそかな楽しみ

岩佐美代子 / 文藝春秋
2001/10出版
ISBN : 9784166602025
価格:¥745(本体¥690)

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山本淳子さんコメント 注釈書の小さな見落としに「生活感覚」で「おかしいなあ」と思うところから研究が始まることがある...。『枕草子』の「はひぶし」の意味、清涼殿の「萩の戸」の位置。著者の専門とする中世文学もふんだんに盛り込まれる。著者の言葉は柔らかく古典を愛する思いに溢れていて、研究が愛情から生まれることを教えてくれる。

源氏物語 物語空間を読む

源氏物語 物語空間を読む

三田村雅子 / 筑摩書房
1997/01出版
ISBN : 9784480056948
価格:¥712(本体¥660)

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山本淳子さんコメント 著者には「三田村ワールド」といってもよい世界があって、『源氏物語』も『枕草子』もそこに取り込まれると、今まで何の気なしに読んでいた言葉が突然輝きだす。本書にももちろんその世界がある。例えば「若菜」の巻名自体が持つ両義性―光源氏の「老い」への抵抗と「若さ」への希求のことなど。研究とは冒険であり、ときめきなのだ。そう思わせてくれる好著だ。

源氏物語と紫式部 研究の軌跡

源氏物語と紫式部 研究の軌跡

紫式部顕彰会、角田文衛 / 角川学芸出版
2008/07出版
ISBN : 9784046211712
価格:¥30,240(本体¥28,000)

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山本淳子さんコメント 源氏物語千年紀をめざして角田文衛氏が2006年に発案したことから始まった、昭和期源氏物語(紫式部)研究史大成。残念ながら刊行を前に角田氏は他界されたが、企画は大部な書として実った。『源氏物語』研究が画期を迎えている今、こうした書がやはり必要だったのだと感じる。この書は角田氏の遺産だ。


「じんぶんや」とは?

jinbunya.gifこんにちは。じんぶんやです。
2004年9月、紀伊國屋書店新宿本店に「じんぶんや」という棚が生まれました。

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「じんぶんや」に並ぶ本を選ぶのは、編集者、学者、評論家など、その月のテーマに精通したプロの本読みたちです。「世に溢れかえる書物の山から厳選した本を、お客様にお薦めできるようなコーナーを作ろう」と考えて立ち上げました。数多の本を読み込んだ選者たちのおすすめ本は、掛け値なしに「じんぶんや」推薦印つき。
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ご愛顧のほど、どうぞよろしくお願いします。
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こちらのページから今までの「じんぶんや」をご覧いただけます。

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【じんぶんや第45講】 山本淳子選「平安文学とその周辺」
■場所 紀伊國屋書店新宿本店 5Fカウンター前
■会期 2008年12月1日~2009年1月中旬
■お問合せ 紀伊國屋書店新宿本店 03-3354-0131

2008.12.01 特集[TOP]  人文 文学 じんぶんや 古典 平安